新規事業所で処遇改善加算を算定するには?初月取得・必要書類・申請期限を解説【令和8年度】

介護パートナー編集部作成|読了時間:約16分

これから介護事業所を開設する場合、「新しい事業所でも介護職員等処遇改善加算(以下、処遇改善加算)を取れるのか」「開設した初月から算定できるのか」は、多くの経営者・担当者が最初に気にする点です。処遇改善加算は、介護職員をはじめとする職員の賃金改善を後押しするための加算です。

この記事では、新規開設する介護事業所が処遇改善加算を算定するために、指定申請の準備から初回の算定・請求までに何を、いつ、どこへ行うのかを時系列で整理します。介護保険サービスを対象とし、障害福祉サービスの処遇改善加算は制度・様式が異なるため扱いません。制度・要件・期限・必要書類は、令和8年度の一次資料(令和8年3月13日付け老発0313第6号/介護保険最新情報Vol.1479など)を基準にしています。

結論(要点)

  • 新規事業所でも、要件を満たして必要な届出を行えば処遇改善加算を算定できます(自動で取得できるわけではありません)。
  • 開設初月からの算定を希望する場合は、指定申請と並行して加算の準備を進めます。
  • 処遇改善計画書と体制届は別々の書類として、それぞれ要否と期限を確認します。
  • 提出期限・提出方法・提出先は、管轄する指定権者へ事前に確認します。
  • 就業規則・賃金規程・キャリアパスの整備と職員への周知を後回しにしないことが重要です。

目次

この記事で分かること

  • 新規事業所でも処遇改善加算を算定できる条件と、開設初月から取得するための流れ
  • 提出する書類と、事業所内で保管する証拠書類の違い
  • 処遇改善計画書と体制届の違い、提出期限の考え方
  • 前年度実績がない場合の計画書の考え方、開設前に整えておきたい要件
  • 新規事業所で起こりやすい失敗と、確認チェックリスト

新規事業所でも処遇改善加算を算定できる

新しく開設する介護事業所も、処遇改善加算の対象になり得ます。ただし、開設したからといって自動的に算定できるわけではありません。対象となるサービスであること、算定する加算区分の要件を満たすこと、必要な届出を行うことが前提になります。

また、令和8年度は令和8年6月からの期中改定で制度が変わっています。令和8年4月・5月と6月以降で加算区分などが異なり、6月からは訪問看護・訪問リハビリテーション・居宅介護支援などが新たに対象になりました。新規開設のタイミングによって、どの区分・どの様式が対象になるかが変わるため、令和8年6月以降の制度区分に注意してください。

💡 用語補足:「指定権者」とは、事業所の指定・監督を行う行政のことです。サービス種別や所在地によって、都道府県・政令指定都市・中核市・市区町村などのいずれかになります。

新規事業所が開設初月から算定するための流れ

開設初月から算定を目指す場合は、指定申請の準備と並行して、加算の要件整備と書類作成を進めます。全体の流れは次のとおりです。

図解1/新規事業所が処遇改善加算を算定するまでの流れ

1

取得する加算区分を決める

対象サービスを確認し、Ⅰイ・Ⅰロ・Ⅱイ・Ⅱロ・Ⅲ・Ⅳなど、どの区分を目指すかを決めます。

2

算定要件を確認する

区分ごとに必要な要件(賃金改善・キャリアパス・職場環境等)を確認します。

3

賃金改善の方法を決める

加算額以上の賃金改善をどの職員に、どのように配分するかを決めます。

4

就業規則・賃金規程・キャリアパスを整備する

要件に対応する規程を整備し、職員へ周知します。周知の記録も残します。

5

処遇改善計画書を作成する

令和8年度様式(別紙様式2)で、賃金改善計画や要件への対応を記載します。

6

体制届・体制等状況一覧表を準備する

指定権者が案内する様式で、算定する加算区分などを届け出る準備をします。

7

指定権者へ提出する

期限・提出方法・提出先を確認し、計画書と体制届を提出します。

8

算定開始後に賃金改善と記録保存を行う

計画どおり賃金改善を実施し、根拠となる記録・資料を保存します。

9

国保連への請求と実績報告へつなげる

加算を反映して請求し、年度後に実績報告を行います。

※各手続きの期限・様式・提出方法は指定権者によって異なります。最終的な期日は必ず管轄の指定権者へ確認してください。

開設初月からの算定を希望する場合は、指定申請と並行して、計画書と体制届の準備を進めます。新規指定申請と加算関係の書類を同時に受け付けるか、また事業所番号が未確定の段階でどのように記載するかは、指定権者によって異なります。指定通知を待ってから準備を始めると、初月からの算定に間に合わない可能性があります。指定申請を行う前、または準備の段階で、指定権者へ提出方法と期限を確認してください。

新規事業所が提出する主な書類

書類には、「指定権者へ提出するもの」と「事業所内で整備・保管するもの(提出は求められないが、確認や実績報告の根拠になるもの)」があります。この2つを混同しないことが大切です。

区分書類役割
指定権者へ提出処遇改善計画書(別紙様式2)賃金改善の計画、加算区分、要件への対応を届け出る
指定権者へ提出介護給付費算定に係る体制等に関する届出書加算の届出を行う事業所と届出内容を示す
指定権者へ提出介護給付費算定に係る体制等状況一覧表算定する加算区分などを一覧で申告する
指定権者へ提出指定権者が追加で求める書類指定通知書の写しなど、指定権者の案内による
事業所内で整備・保管就業規則・賃金規程・キャリアパス関連資料要件を満たしていることの根拠
事業所内で整備・保管職員への周知記録賃金改善の内容を職員へ周知したことの記録
事業所内で整備・保管賃金台帳・給与明細、加算額と賃金改善額を確認できる資料加算額以上の賃金改善を確認・実績報告する根拠

整備・保管する書類は、提出しないから作らなくてよい、というものではありません。運営指導や実績報告で確認されることがあるため、算定開始の時点から整えておきます。処遇改善計画書・実績報告書とその根拠資料は、2年間保存することが求められます。ただし、賃金台帳など他の法令で別の保存期間が定められている書類は、その期間にも従います。

処遇改善計画書と体制届の違い

新規事業所では、計画書と体制届の両方を確認する必要があります。役割が異なるため、次の表で整理します。

項目処遇改善計画書体制届
目的賃金改善の計画と要件対応を届け出る加算を算定する体制・区分を届け出る
主な記載内容加算区分、賃金改善計画、キャリアパス・職場環境等要件への対応事業所番号、サービス種別、届出区分、算定する加算区分など
提出先指定権者指定権者
提出時期算定を始める前(年度ごとに提出)算定体制が変わるとき(新規算定・区分変更など)
新規事業所での役割賃金改善の計画を示す土台初月から加算を算定する体制を届け出る

体制届そのものの意味や必要なケース、書き方は、処遇改善加算の体制届が必要なケースと書き方で詳しく解説しています。あわせてご確認ください。

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新規事業所の提出期限

国の通知には、通常の提出期限が示されています。ただし、指定権者が期限を延長する場合や、新規指定時の提出方法を別途案内する場合があります。制度上の基本期限と、指定権者による事務運用を分けて確認しましょう。基本的な考え方は次のとおりです。

  • 処遇改善計画書:その年度に初めて算定する月の前々月末までが原則です。
  • 体制届(通常):居宅系は算定開始月の前月15日、施設系は算定開始月の1日までが通常の期限です。計画書とは期限が異なります。
  • 指定権者による事務運用:指定権者が期限を延長する場合や、新規指定時に別の提出方法・期限を案内する場合があります。
  • 指定申請と加算関係書類:指定申請の締切と、加算関係書類の締切が別に設定される場合があります。

開設予定日が決まったら、その日から逆算して、指定申請・計画書・体制届それぞれの締切を指定権者へ確認します。次の図は一般的な逆算の例です。原則・通常の期限をもとにしていますが、指定権者が延長や別の取扱いを案内する場合があるため、最終的には指定権者の案内で確認してください。

図解2/開設準備から初回請求までのスケジュール(逆算の例)

  • 開設の約3か月前〜要件設計・規程整備取得区分を決め、就業規則・賃金規程・キャリアパスを整備し、職員へ周知します。
  • 指定申請指定申請の提出指定申請の締切を確認して提出します。事業所番号は指定通知書で確定します。
  • 算定開始月の前々月末まで(原則)処遇改善計画書を提出その年度に初めて算定する月の前々月末までが原則です。
  • 居宅系は前月15日/施設系は当月1日(通常)体制届を提出体制届は計画書と期限が異なります。サービス類型で締切が分かれます。
  • 算定開始月サービス提供・加算算定を開始計画に沿って賃金改善を実施し、加算額・給与・賃金改善額を継続して管理します。
  • サービス提供の翌月国保連への初回請求加算を反映して国民健康保険団体連合会(国保連)へ請求します。
  • 算定開始月の翌々月ごろ初回入金審査を経て加算を含む介護給付費が入金されます。入金までの資金繰りに注意します。
  • 翌年度実績報告賃金改善の実績を、根拠資料をもとに実績報告書で報告します。

※上記は原則・通常の期限です。指定権者が期限を延長する場合や、新規指定時に別の取扱いを案内する場合があるため、具体的な期日は必ず指定権者の令和8年度案内で確認してください。加算の入金はサービス提供より後になるため、資金繰りに注意します。

前年度実績がない場合の計画書の考え方

新規事業所には、その事業所単位での前年度の賃金実績がありません。そのため、新規開設では計画の立て方を整理しておく必要があります。

まず、次の2つを区別します。

  • 法人内に既存の事業所がある場合:法人としては処遇改善の実績や体制があるため、法人単位の計画の中で新規事業所を位置づけます。
  • 法人全体が新規の場合:法人としても実績がないため、見込みをもとに計画を作成します。

複数の介護サービス事業所を運営する事業者は、処遇改善計画書を法人単位で一括して作成できます。一括して作成した場合でも、それぞれの事業所を管轄する指定権者へ提出します。提出先が複数に分かれる場合があります。なお、体制届は介護サービス事業所ごとに提出します。

新規事業所では、加算見込額、職員構成、賃金改善の方法を、採用計画や賃金規程などの根拠資料と整合させて記載します。前年度実績がないことを理由に、推測による架空の数値を入力してはいけません。不明な入力欄は推測で埋めず、令和8年度様式の入力欄と記入例に従い、判断できない場合は指定権者へ確認してください。厚生労働省が計画書(別紙様式2)と記入例を公開しています。

開設前に整備しておきたい算定要件

処遇改善加算は、賃金改善に加えて、区分ごとに定められた要件を満たす必要があります。取得を目指す区分によって、必要な要件は異なります。ここでは要件の全体像を示します。詳細な要件の解説は、別の記事にゆずります。

  • 月額賃金改善要件
  • キャリアパス要件Ⅰ(任用要件・賃金体系の整備)
  • キャリアパス要件Ⅱ(研修の実施等)
  • キャリアパス要件Ⅲ(昇給の仕組みの整備)
  • キャリアパス要件Ⅳ(改善後の賃金額に関する要件)
  • キャリアパス要件Ⅴ(介護福祉士等の配置要件)
  • 職場環境等要件
  • 令和8年度特例要件(生産性向上・協働化に関する取組。上位区分で必要)

上位区分ほど、必要な要件は多くなります。なお令和8年度には、一部の要件について、令和9年3月末までの対応を計画書で誓約する取扱いがあります。ただし、対象となる要件や適用条件は、サービス類型や取得区分によって異なります。取得を予定する区分について、令和8年度通知・計画書・記入例で確認してください。

賃金改善は「加算額以上」が基本です。処遇改善加算は、算定額に相当する賃金改善を行うことが前提です。新規算定によって増える加算額分は、新たな賃金改善に充てる必要があり、月額賃金改善要件も満たす必要があります。具体的な支給時期と支給方法は、計画書・賃金規程・給与計算と整合させます。加算の入金はサービス提供より後になるため、資金繰りを考慮しておきます。

新規事業所で起こりやすい失敗

  • 指定申請さえすれば加算も算定できると思っていた
  • 計画書だけを提出して体制届を忘れた
  • 体制届だけを提出して計画書を忘れた
  • 開設後に賃金規程を整備しようとして、算定開始に間に合わなかった
  • 職員への周知記録を残していなかった
  • 加算見込額と賃金改善額の管理方法を決めていなかった
  • 加算は後払いのため、初回入金までの資金繰りを考えていなかった
  • 加算を受け取ってから配分方法を考え始めた
  • 指定権者の様式や提出方法を確認していなかった

新規事業所向けチェックリスト

  • 対象サービスかどうかを確認した
  • 取得する加算区分を決めた
  • 取得区分に必要な要件を満たす見込みがある
  • 賃金改善の方法(対象者・配分)を決めた
  • 就業規則・賃金規程へ反映した
  • 職員へ周知し、記録を残した
  • 処遇改善計画書を作成した
  • 体制届・体制等状況一覧表を準備した
  • 指定権者へ提出期限・提出方法を確認した
  • 算定開始後の管理担当者を決めた
  • 実績報告に必要な記録の保存方法を決めた

よくある質問

Q1. 新規事業所でも開設初月から処遇改善加算を算定できますか

要件を満たし、必要な届出を期限内に行えば、開設初月から算定できる場合があります。ただし、新規指定申請と加算関係書類を同時に受け付けるか、事業所番号が未確定の場合にどのように記載するかは、指定権者によって異なります。開設予定が決まった段階で、提出期限と手続き方法を指定権者へ確認してください。

Q2. 指定申請書を提出すれば、処遇改善加算も自動的に算定されますか

いいえ。指定申請と加算の算定は別の手続きです。加算を算定するには、要件を満たしたうえで、計画書と体制届を提出する必要があります。

Q3. 処遇改善計画書と体制届は両方必要ですか

新規算定では、一般的に両方が必要になります。役割が異なる別の書類のため、それぞれ様式・提出先・期限を確認してください。

Q4. 前年度の賃金実績がない場合はどうしますか

新規事業所には事業所単位の前年度実績がないため、見込みをもとに計画を作成します。賃金改善の見込額や職員構成を、採用計画や賃金規程などの根拠資料と整合させます。架空の数値を入力せず、令和8年度の様式と記入例で入力方法を確認してください。

Q5. 職員をまだ採用していない段階でも準備できますか

取得区分の検討、規程の整備、様式の確認などの準備は進められます。ただし、計画書は賃金改善の見込みや職員への周知が要素になるため、採用計画とあわせて準備し、職員が在籍する前提で整えます。

Q6. 就業規則の届出義務がない小規模事業所はどうしますか

常時使用する労働者が一定数未満で就業規則の作成・届出義務がない場合でも、キャリアパス要件などでは賃金体系や任用要件を書面(内規等)で整備し、職員へ周知する必要があります。就業規則がないから要件を満たせない、ということではありません。

Q7. 加算の入金前から賃金改善を始める必要がありますか

加算は、算定額に相当する賃金改善を行うことが前提です。具体的な支給の時期や方法は、計画書・賃金規程・給与計算と整合させて決めます。加算の入金はサービス提供より後になるため、賃金改善の実施と入金の時期にずれが生じます。資金繰りを見込んでおきましょう。

Q8. 開設初月に間に合わなかった場合、翌月以降から算定できますか

期限に間に合わなかった場合でも、あらためて期限内に届け出れば、翌月以降から算定できる場合があります。過去にさかのぼっての算定はできません。取扱いは指定権者へ確認してください。

Q9. 法人内の複数事業所をまとめて計画書に記載できますか

複数の介護サービス事業所を運営する事業者は、処遇改善計画書を法人単位で一括して作成できます。一括作成した場合でも、それぞれの事業所を管轄する指定権者へ提出します。体制届は介護サービス事業所ごとに提出するため、提出先が複数に分かれる場合があります。

Q10. どの指定権者へ提出すればよいですか

サービス種別によって異なります。都道府県・政令市・中核市が指定するサービスはその自治体へ、市区町村が指定するサービス(居宅介護支援、地域密着型サービス、介護予防支援、総合事業など)は所在する市区町村へ提出します。

まとめ

  • 新規事業所でも、要件を満たして届出を行えば処遇改善加算を算定できます。
  • 初月算定を目指すなら、開設準備と同時に加算の準備を進めます。
  • 処遇改善計画書、体制届、事業所内の規程の3つを並行して準備します。
  • 期限・提出先・提出方法は、指定権者の令和8年度の最新案内で最終確認します。
  • 算定後は、加算額以上の賃金改善と、根拠となる証拠書類の保存が必要です。

なお、算定を始めたあとに、事業所情報や加算区分などを変更する場合は、変更届が必要になることがあります。詳しくは処遇改善加算の変更届の提出期限と書き方をご確認ください。

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参考にした公式情報

更新履歴

  • 2026年8月:新規公開(令和8年3月13日付け老発0313第6号/介護保険最新情報Vol.1479に基づき作成)

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