処遇改善加算は、対象となる1か月の総単位数に、サービス・算定区分ごとの加算率を乗じて計算します。ただし、実際の請求では処遇改善加算そのものを計算の基礎から除くこと、令和8年4・5月と6月以降で区分・加算率が異なること、地域区分の単価や端数処理が関係することに注意が必要です。
- 基本は「処遇改善加算を除く月間総単位数 × 加算率」です。
- 円で試算するときは、算出した加算単位数に地域区分等の1単位単価を反映します。
- 利用者負担分を除いた国保連入金額だけを基礎にすると、正しく試算できません。
- 令和8年度は4・5月と6月以降で加算率表が異なるため、期間を分けて確認します。
- 実績報告では、概算額ではなく通知書等で確認した実際の加算算定額を使用します。
処遇改善加算の単位数 = 処遇改善加算を除く1か月の総単位数 × サービス・区分別の加算率
例で使用する加算率と1単位単価は、特定サービスの実際の率を示すものではありません。実際の請求は、厚生労働省の当該期間の加算率表、算定区分、請求ソフトの計算結果、国保連等の通知で確認してください。
目次
この記事でわかること
- 処遇改善加算を単位数から計算する手順
- 「介護報酬総額×加算率」という説明の注意点
- 訪問介護・通所介護・グループホームを想定した計算例
- 令和8年度の加算率を確認するときの注意点
- 計画書と実績報告書で使用する金額の違い
- Excelで管理する場合の表と確認方法
処遇改善加算の正しい計算手順
- 対象月とサービス種別を確認する
令和8年4・5月なのか、6月以降なのかを分け、算定するサービスを確認します。 - 算定区分を確認する
Ⅰ、Ⅱ、Ⅲ、Ⅳまたは令和8年6月以降のⅠイ・Ⅰロ・Ⅱイ・Ⅱロ等、届出済みの区分を確認します。 - 計算の基礎となる総単位数を集計する
基本サービス費に各種加算・減算を反映し、処遇改善加算自体は除きます。 - 公式の加算率を乗じる
対象期間・サービス・区分に対応する加算率を使用します。 - 地域区分等の1単位単価を反映する
円換算が必要な場合、算定された単位数に該当する1単位単価を反映します。 - 請求結果と照合する
端数処理を含む正式な請求額は請求ソフト、国保連の支払決定額通知書等で確認します。
計算の基礎に含めるもの・除くもの
| 項目 | 取扱い | 注意点 |
|---|---|---|
| 基本サービス費 | 含める | 当月に算定した単位数を使用 |
| 各種加算・減算 | 原則として反映 | 処遇改善加算を除く。サービス別の算定構造を確認 |
| 処遇改善加算 | 除く | 加算自体に再び加算率を掛けない |
| 利用者負担分 | 円の入金額だけで除外しない | 介護給付費だけを基礎にするのではなく、請求の総単位数で計算する |
| 地域区分の単価 | 円換算時に反映 | サービス・地域によって1単位単価が異なる |
「介護報酬総額×加算率」は概算を説明するには便利ですが、実務では先に総単位数で加算単位数を計算すると理解した方が安全です。国保連から振り込まれた金額だけを見ても、利用者負担分や調整額があるため、計算の基礎を正確に確認できない場合があります。
計算例|単位数から円に換算する
次の例では分かりやすくするため、1単位単価を10円と仮定しています。加算率も説明用の仮定です。
| 項目 | 仮定 | 計算 |
|---|---|---|
| 処遇改善加算を除く月間総単位数 | 500,000単位 | 基本サービス費+他の加算・減算 |
| 加算率 | 20.0% | 対象期間・サービス・区分に対応する率 |
| 加算単位数 | 100,000単位 | 500,000 × 20.0% |
| 1単位単価 | 10円 | 説明用の仮定 |
| 加算額の概算 | 1,000,000円 | 100,000単位 × 10円 |
※実際の単位数・円換算・端数処理は、介護報酬の請求ルールと請求ソフトの結果に従います。
サービス別の計算例
サービスが違っても計算手順は同じです。変わるのは主に、月間総単位数、算定区分に対応する加算率、1単位単価です。
訪問介護を想定した例
総単位数250,000単位、仮の加算率20%なら、加算単位数は50,000単位です。1単位10円と仮定すると概算50万円です。
通所介護を想定した例
総単位数300,000単位、仮の加算率8%なら、加算単位数は24,000単位です。1単位10円と仮定すると概算24万円です。
グループホームを想定した例
総単位数400,000単位、仮の加算率15%なら、加算単位数は60,000単位です。1単位10円と仮定すると概算60万円です。
複数サービスの場合
同じ法人でも、サービス種別・事業所番号・算定区分・地域単価を確認し、請求単位で集計してから法人全体の管理表へまとめます。
計算例で誤解しやすい点
- 訪問介護、通所介護、グループホームで同じ加算率を使うことはできません。
- 「上位区分だから20%」のように、区分だけで率は決まりません。
- 複数ユニットがあるから必ずユニットごとに請求計算する、という意味ではありません。指定・請求単位に沿って管理します。
- 登録ヘルパーや非常勤職員を全員一律に配分対象とする義務がある、という意味ではありません。配分は通知の範囲で事業所が決め、著しく偏った配分を避けます。
令和8年度の加算率は期間を分けて確認する
令和8年度通知では、4月・5月は別紙1表1-1、6月以降は別紙1表1-2から1-5までのサービス類型別加算率を使用するとされています。令和8年6月から新たに対象となったサービスもあるため、前年のExcelに率を上書きするだけでは誤りが起きやすくなります。
| 確認項目 | 令和8年4・5月 | 令和8年6月以降 |
|---|---|---|
| 区分名称 | 4・5月の区分を確認 | Ⅰイ・Ⅰロ・Ⅱイ・Ⅱロ等を含む新しい区分を確認 |
| 加算率表 | 通知の表1-1 | 通知の表1-2〜1-5 |
| 新たな対象サービス | 対象外のサービスあり | 訪問看護、訪問リハビリテーション、居宅介護支援等に新設 |
| 集計方法 | 4・5月分をまとめる | 6月以降分を別にまとめる |
制度変更の全体像は「処遇改善加算・令和8年度の変更点」、区分の判定は「処遇改善加算の算定要件」で確認してください。
計画書と実績報告書では使う金額が違う
| 書類 | 使用する金額 | 実務上の確認 |
|---|---|---|
| 処遇改善計画書 | 年間の加算見込額・賃金改善見込額 | 過去実績、利用者数、区分変更、令和8年度の期間別加算率を反映 |
| 月次管理表 | 月ごとの加算算定額・賃金改善額 | 国保連資料、給与データ、法定福利費等の増加分を照合 |
| 実績報告書 | 実際の加算算定額・賃金改善額 | 指定権者の様式と通知書等に基づき確定額を入力 |
計画時の見込額と実績額が一致しないこと自体はあり得ます。重要なのは、実績報告時に加算の算定額に相当する賃金改善を実施し、区分ごとの要件を満たしたことを説明できることです。
賃金改善額に含められるもの
令和8年度通知では、基本給、手当、賞与等による賃金改善に加え、その賃金改善に伴って増加する法定福利費等の事業主負担分を含めることができます。ただし、通常の定期昇給をどの範囲で賃金改善として扱うか、令和8年度に増加した加算額に対応する新たな賃金改善など、別途確認が必要です。
職員へ支払った給与・賞与の全額を計上するのではなく、加算を原資として改善した部分と、その改善に伴う法定福利費等の増加分を、根拠が分かる形で集計します。
実績報告書の詳しい作り方は「処遇改善加算の実績報告書」、配分の設計は「処遇改善加算の配分ルール」をご覧ください。
Excelで管理する場合の作り方
職員数だけでExcel管理の可否を決めることはできません。事業所数、サービス数、区分変更、給与項目、入退職、法定福利費等の計算、担当者間の分担によって難易度が変わります。
最低限用意したい4つのシート
| シート | 主な項目 | 目的 |
|---|---|---|
| 基本設定 | 年度、事業所、サービス、算定区分、期間別加算率、単位単価 | 率の直接入力や前年データの使い回しを防ぐ |
| 月次加算 | 対象月、基礎単位数、加算率、加算単位数、加算算定額 | 加算収入を月別・事業所別に確認する |
| 賃金改善 | 職員、給与項目、改善前後、改善額、法定福利費等 | 改善額と根拠を対象者別に確認する |
| 年間照合 | 累計加算額、累計賃金改善額、差額、確認者、確認日 | 実績報告前の不足・不一致を早期発見する |
Excelで起きやすいミス
- 令和8年4・5月と6月以降を同じ加算率で計算する
- 前年の算定区分・加算率を残したまま使用する
- 処遇改善加算を含む総単位数に再度加算率を掛ける
- 事業所、サービス、事業所番号を混在させる
- 計画額、請求額、入金額、賃金改善額を同じ列で管理する
- 数式セルを上書きし、変更履歴が残らない
- 退職・休職・賞与・遡及支給の反映が漏れる
- 法定福利費等の増加分について計算根拠が残っていない
Excel管理で最も重要なのは、複雑な自動計算ではなく、どの公式資料・通知書・給与データを使った数字か追跡できることです。加算率のセルには対象期間と出典を記載し、数式セルを保護し、確定後のファイルを月ごとに保存すると確認しやすくなります。
自社対応か専門家へ相談するかの判断
| 状況 | 自社対応の目安 | 相談を検討したい理由 |
|---|---|---|
| 単一事業所・単一サービスで区分変更なし | 担当者が通知と請求資料を確認できれば管理しやすい | 初年度や担当変更時は第三者確認が有効 |
| 複数事業所・複数サービス | 事業所別集計と法人合算の手順が必要 | 率・事業所番号・賃金配分の混在を防ぐ必要がある |
| 年度途中の新規算定・区分変更 | 期間を分けた管理ができれば対応可能 | 変更届、体制届、増加額に対応する賃金改善も確認が必要 |
| 過去の不足・不一致が疑われる | まず原資料を保全して再集計 | 指定権者への相談、実績報告修正、過誤調整等が関係する可能性 |
| 就業規則・給与規程の変更が必要 | 労務手続を含めた対応が必要 | 社会保険労務士への相談が適する場合がある |
専門家へ依頼しても算定可否や返還回避が保証されるわけではありません。依頼範囲、使用する原資料、最終確認者、指定権者への照会方法を明確にします。
計算前チェックリスト
- 対象月が令和8年4・5月か、6月以降か確認した
- サービス種別と届出済みの算定区分を確認した
- 公式通知の対応する加算率表を確認した
- 処遇改善加算を除く総単位数を使用した
- 各種加算・減算を正しく反映した
- 地域区分等の1単位単価を確認した
- 請求ソフトの算定結果と照合した
- 国保連等の通知書で確定額を確認した
- 加算見込額と実際の算定額を分けて管理した
- 賃金改善額の対象給与項目を特定した
- 法定福利費等を含める場合の根拠を残した
- 加算額と賃金改善額を月次・累計で照合した
よくある質問
処遇改善加算は何に加算率を掛けますか?
利用者負担分を含めて計算しますか?
加算率は毎年同じですか?
地域区分は処遇改善加算にも関係しますか?
計画書には国保連からの入金額を書けばよいですか?
法定福利費を賃金改善額に含められますか?
加算額と賃金改善額は完全に同額でなければいけませんか?
Excelだけで管理しても問題ありませんか?
まとめ
- 処遇改善加算は、処遇改善加算を除く月間総単位数に加算率を乗じて計算する
- 円換算時には地域区分等の1単位単価を反映する
- 令和8年4・5月と6月以降では、区分・加算率表を分けて確認する
- 計算例の率を自事業所へそのまま使用しない
- 計画書は見込額、実績報告書は実際の算定額で管理する
- 加算額と賃金改善額は月次・累計で継続的に照合する
計算・配分・実績報告のつながりに不安がある方へ
複数事業所、年度途中の区分変更、過去年度の不一致などは、計算だけでなく届出や給与規程も確認する必要があります。資料を整理したうえで、指定権者または処遇改善加算に詳しい専門家へ相談してください。
専門家への相談・お問い合わせはこちら関連記事
参考にした公式情報
本記事は公表されている国の資料に基づく一般的な情報です。記事内の数字は計算手順を説明する仮定であり、実際の加算率・算定額ではありません。請求時は対象期間の告示・通知、指定権者の案内、請求ソフトおよび国保連等の通知を確認してください。
コメント