介護報酬の減算とは?主な種類・減算率・届出・返還リスクをわかりやすく解説

介護報酬の減算とは、定められた人員配置や運営上の基準などを満たしていない場合に、通常より少ない単位数で介護報酬を算定する仕組みです。

減算の対象になると、事業所の収入が減るだけでなく、過去の請求について返還や利用者負担額の修正が必要になる場合があります。

この記事では、介護報酬の減算の基本、主な種類、減算が始まる時期、届出、誤請求への対応、令和8年度の変更点までわかりやすく解説します。

この記事の要点

  • 減算は、介護報酬から一定の単位数または割合を差し引く仕組み
  • 人員不足だけでなく、計画・委員会・研修・記録などの未実施も対象になる
  • 減算率や適用開始日は、サービスと減算の種類によって異なる
  • 要件を満たさなくなった場合は、請求を止めて届出の要否を確認する
  • 令和8年6月から、人員基準欠如減算に一定の猶予措置が設けられた

目次

  1. 介護報酬の減算とは
  2. 加算・減算・算定不可の違い
  3. 介護報酬における主な減算
  4. 減算率と計算方法
  5. 減算はいつから始まるのか
  6. 減算に関する届出
  7. 減算の見落としが分かった場合
  8. 請求済みの場合の返還対応
  9. 減算を防ぐ管理方法
  10. 令和8年度の重要な変更点
  11. 実務確認表
  12. よくある質問

介護報酬の減算とは

介護報酬の減算とは、介護事業所が一定の基準や要件を満たしていない場合に、通常の介護報酬から決められた単位数または割合を差し引いて算定する仕組みです。

減算が設けられている主な目的は、必要な職員配置、利用者の安全、虐待防止、災害や感染症への備えなどを確保することです。

減算の原因には、次のようなものがあります。

  • 必要な人数の職員を配置できていない
  • 必要な資格を持つ職員がいない
  • 業務継続計画を策定していない
  • 高齢者虐待防止のための措置を実施していない
  • 身体的拘束等の適正化に必要な措置を実施していない
  • 定員を超えて利用者を受け入れている
  • ケアプランに必要な手続きを行っていない
  • 同一建物に居住する利用者へ一定割合以上のサービスを提供している

減算は事業所の判断で免除できません

減算要件に該当した場合、「一時的な不足だった」「利用者への支援に問題はなかった」などの理由だけで通常どおり請求することはできません。告示、留意事項通知、Q&Aに従って判断する必要があります。

加算・減算・算定不可の違い

介護報酬には、基本報酬への上乗せだけでなく、減額や算定そのものが認められない取扱いがあります。

区分内容
加算一定の人員配置や支援体制などを評価し、基本報酬へ単位数を上乗せする
減算基準や要件を満たしていない場合などに、所定単位数から一定の単位数または割合を差し引く
算定不可加算や基本報酬の要件を満たさず、その報酬を請求できない

「減算して請求できる場合」と「算定自体ができない場合」は異なります。すべての要件不足を減算として処理できるわけではありません。

介護報酬における主な減算

減算の種類と対象サービスは、それぞれ異なります。ここでは、複数の介護サービスに関係する代表的な減算を紹介します。

人員基準欠如減算

人員基準欠如減算は、法令で定められた職員の人数や資格などを満たしていない場合に適用される減算です。

対象となる職種、減算率、減算開始の時期はサービスによって異なります。また、欠員の程度や不足した職種によっても取扱いが変わります。

確認が必要な項目には、次のようなものがあります。

  • 職種ごとの配置人数
  • 常勤または非常勤の別
  • 常勤換算数
  • 専従・兼務の条件
  • 資格や研修の修了状況
  • 利用者数に応じた必要人数

指定基準違反と減算は同じ意味ではありません

人員基準を満たしていない場合、報酬上の減算だけでなく、指定基準違反として改善指導などの対象になる可能性があります。

定員超過利用減算

定員超過利用減算は、運営規程などで定めた利用定員を超えて利用者を受け入れ、一定の基準に該当した場合に適用される減算です。

災害、虐待その他のやむを得ない事情がある場合には、例外的な取扱いが認められることがあります。ただし、事業所だけで判断せず、指定権者へ確認する必要があります。

業務継続計画未策定減算

感染症や災害が発生した場合でも必要な介護サービスを継続できるよう、介護事業所には業務継続計画の策定が求められています。

必要な計画を策定していない場合や、計画に従って必要な措置を講じていない場合は、業務継続計画未策定減算の対象になります。

減算率はサービスによって異なり、所定単位数の1%または3%に相当する単位数を減算する取扱いがあります。

計画書を保管するだけでは不十分です

事業所のサービス内容、連絡体制、職員の役割などが実態に合っているかを確認し、必要に応じて見直すことが重要です。

高齢者虐待防止措置未実施減算

高齢者虐待の発生や再発を防ぐために必要な措置を実施していない場合は、高齢者虐待防止措置未実施減算の対象になります。

主に確認される措置は、次のとおりです。

  • 虐待防止検討委員会の定期的な開催
  • 委員会の結果について職員へ周知すること
  • 虐待防止のための指針の整備
  • 職員研修の定期的な実施
  • 措置を適切に実施する担当者の設置

必要な措置のいずれかを実施していない場合、原則として所定単位数の1%に相当する単位数が減算されます。

身体拘束廃止未実施減算

身体的拘束等の適正化を図るために必要な措置が講じられていない場合に適用される減算です。

対象サービスでは、身体的拘束等を行っていない事業所であっても、委員会、指針、研修などの必要な措置が不足していれば減算になることがあります。

サービスによって、所定単位数の1%または10%に相当する単位数を減算する取扱いがあります。

身体拘束を行っていなくても確認が必要です

「身体拘束をしていないから対象外」とは限りません。対象サービスでは、身体的拘束等の適正化に必要な体制が整っているかを確認してください。

居宅介護支援の運営基準減算

居宅介護支援では、ケアマネジメントの一連の業務について、定められた手続きを行っていない場合に運営基準減算が適用されることがあります。

たとえば、利用者への説明、文書の交付、サービス担当者会議、居宅サービス計画の交付、モニタリングなどについて確認が必要です。

要件を満たしていない状態が続くと、減算の割合が大きくなったり、報酬を算定できなくなったりする場合があります。

訪問介護の同一建物減算

訪問介護では、事業所と同一または隣接する敷地内の建物などに居住する利用者へサービスを提供した場合、一定の条件で減算が適用されます。

同一建物に居住する利用者の人数や、事業所の利用者全体に占める割合によって減算率が異なります。

判定期間、減算の適用期間、正当な理由の有無、届出期限を定期的に確認する必要があります。

その他の減算

サービスによっては、次のような減算もあります。

  • 送迎を行わない場合の減算
  • 長期間利用した場合の減算
  • 集合住宅に関係する減算
  • 夜勤職員の配置が基準を満たさない場合の減算
  • 栄養管理や安全管理などの体制が整っていない場合の減算
  • 通所系サービスにおける事業所規模に関係する取扱い

自事業所に関係する減算は、サービス別の報酬告示と留意事項通知で確認してください。

減算率と計算方法

減算には、一定の単位数を差し引くものと、所定単位数へ一定の割合を掛けて算定するものがあります。

割合で減算する例

所定単位数が1,000単位で、1%の減算が適用される場合の単純な計算例は、次のとおりです。

1,000単位 × 99% = 990単位

3%の減算であれば、次のようになります。

1,000単位 × 97% = 970単位

ただし、実際の計算では、所定単位数の範囲、端数処理、他の加算・減算との計算順序などを確認する必要があります。

減算率だけで判断しない

同じ名称の減算でも、サービスによって減算率や適用単位が異なる場合があります。事業所全体、利用者単位、1日単位、1回単位のどれに適用されるかも確認してください。

減算はいつから始まるのか

減算の適用開始日は、減算の種類によって異なります。

主な考え方には、次のようなものがあります。

  • 要件を満たしていない事実が発生した月から適用する
  • 事実が発生した月の翌月から適用する
  • 一定期間の実績を確認してから適用する
  • 改善計画を提出した月または改善が確認された月まで適用する

人員基準欠如減算では、不足した職種や欠員の割合などによって、減算開始時期が異なる場合があります。

また、高齢者虐待防止措置未実施減算などでは、事実が生じた月の翌月から改善が認められた月まで減算する取扱いがあります。具体的な適用期間は、該当する通知を確認してください。

発見した月から減算するとは限りません

後から要件不足が分かった場合、減算の対象は発見月ではなく、実際に要件を満たしていなかった時点までさかのぼる可能性があります。

減算に関する届出

減算の状態に該当した場合、指定権者へ介護給付費算定に係る体制等に関する届出書などを提出しなければならないことがあります。

確認する主な内容は、次のとおりです。

  • 減算に該当した年月日
  • 減算の名称
  • 対象となるサービス
  • 対象利用者と対象期間
  • 体制等状況一覧表の変更内容
  • 改善予定日
  • 減算終了時の届出が必要か

届出が必要な状態であるにもかかわらず、届出を行わず通常どおり請求すると、誤請求になる可能性があります。

提出書類、提出期限、提出方法は指定権者によって異なるため、事業所を所管する都道府県・市区町村の案内を確認してください。

減算の見落としが分かった場合

自主点検などで減算の見落としが分かった場合は、次の順番で対応します。

  1. 不足していた要件と原因を確認する
  2. 要件を満たしていなかった期間を特定する
  3. 対象となる利用者を確認する
  4. 対象期間の請求データを確認する
  5. 減算の適用開始日と終了日を確認する
  6. 指定権者へ状況を報告して対応方法を確認する
  7. 必要に応じて国保連への過誤申立てを行う
  8. 利用者負担額を再計算する
  9. 利用者または家族へ説明し、返金などを行う
  10. 再発防止策を実施する

減算の対象期間を事業所だけで決めず、根拠となる告示・通知を確認したうえで指定権者へ相談することが重要です。

請求済みの場合の返還対応

減算すべき期間を通常の単位数で請求していた場合は、差額の返還が必要になる可能性があります。

国保連への対応

請求済みの介護報酬は、過誤申立てなどによって一度請求を取り下げ、減算を反映した内容で再請求することがあります。

処理方法や時期は保険者・国保連によって異なるため、先に指定権者などへ確認してください。

利用者負担への対応

介護報酬の単位数が変わると、利用者の自己負担額も変わる場合があります。

利用者へ多く請求していた場合は、対象期間と金額を説明し、差額を返金します。領収書の再発行や明細書の修正が必要になることもあります。

関連する加算への影響

減算の適用によって、別の加算の算定要件を満たさなくなる場合があります。

一つの減算だけを修正するのではなく、同じ期間に算定した加算や基本報酬への影響も確認してください。

減算を防ぐ管理方法

減算を防ぐためには、請求時だけでなく、日常的に人員配置と運営状況を確認する必要があります。

毎月確認する項目

  • 職員の在籍状況
  • 勤務実績と常勤換算数
  • 資格証と研修修了証
  • 利用者数と定員
  • 委員会の開催状況
  • 研修の実施状況
  • 計画や指針の整備状況
  • 届出内容と実際の運営状況の一致
  • 請求システムの設定

退職や休職が決まったときの確認

職員の退職、休職、異動、勤務時間の短縮が決まった場合は、退職日などを待たずに人員基準への影響を確認します。

特に確認が必要なのは、管理者、サービス提供責任者、介護支援専門員、計画作成担当者、看護職員など、配置要件へ直接影響する職種です。

委員会・研修の年間予定を作る

虐待防止や身体拘束等の適正化などについては、委員会や研修の開催時期を年間予定として管理します。

開催後は、日時、参加者、検討内容、決定事項、職員への周知状況を記録してください。

令和8年度の重要な変更点

令和8年度介護報酬改定では、令和8年6月の算定分から、やむを得ない事情により人員基準を満たせなくなった場合の特例的な取扱いが追加されました。

人員基準欠如減算の猶予措置

突発的で想定が困難な事象によりやむを得ない事情が生じ、人員基準上必要な人数から1割の範囲内で職員が減少した場合、定められた要件をすべて満たせば、年1回に限り減算の適用が猶予されることがあります。

猶予される期間は、人員欠如が生じた日の属する月の翌々月までです。

適用を受けるためには、公共職業安定所や無料職業紹介事業などを活用して採用活動を行い、職員確保の取組とやむを得ない事情を所定の様式へ記載して、指定権者へ報告する必要があります。

人員不足なら自動的に猶予される制度ではありません

職員の減少が1割以内であること、突発的で想定困難な事情であること、必要な採用活動を行っていることなど、通知で定められた条件をすべて満たす必要があります。

また、報告時点で有効な求人票の写しなどが必要です。人員欠如が生じた月の翌月までに、指定権者へ速やかに報告してください。

対象サービスや具体的な要件は、令和8年度の留意事項通知と指定権者の案内を確認する必要があります。

令和8年度に確認すること

  • 人員欠如が猶予措置の対象となるサービスか
  • 職員の減少が必要人数の1割以内か
  • 突発的で想定困難な事情に該当するか
  • 公共職業安定所などを利用して採用活動を行っているか
  • 所定の報告様式を使用しているか
  • 有効な求人票の写しを用意しているか
  • 人員欠如が生じた月の翌月までに報告できるか

介護報酬の減算に関する実務確認表

  • □ 自事業所に適用される減算を確認した
  • □ 最新の報酬告示・留意事項通知・Q&Aを確認した
  • □ 職種ごとの必要人数を確認した
  • □ 毎月の常勤換算数を確認している
  • □ 資格証と研修修了証を確認した
  • □ 利用者数が定員を超えていない
  • □ 業務継続計画を策定している
  • □ 虐待防止の委員会・指針・研修・担当者を整備している
  • □ 身体的拘束等の適正化に必要な措置を実施している
  • □ 委員会と研修の実施記録を保存している
  • □ 届出内容と実際の運営状況が一致している
  • □ 減算が発生した場合の連絡先を確認している
  • □ 請求システムへ正しい減算情報を設定している
  • □ 令和8年度の人員基準欠如に関する特例を確認した

減算や返還の判断に不安はありませんか?

介護報酬の減算は、適用開始日、対象利用者、減算率、届出、過去請求への影響を一体で確認する必要があります。介護パートナーでは、介護事業者向けの実務情報と無料ガイドをLINEでお届けしています。

介護報酬の減算に関するよくある質問

Q1. 介護報酬の減算とは何ですか?

人員配置や運営上の基準などを満たしていない場合に、通常の介護報酬から一定の単位数または割合を差し引いて算定する仕組みです。

Q2. 職員が1人退職したら、すぐに減算になりますか?

必ずしも一律ではありません。必要人数、欠員の割合、職種、サービス、欠員が発生した時期によって取扱いが異なります。令和8年6月からは、一定の条件を満たす場合に減算の適用を猶予する制度も設けられています。

Q3. 身体拘束を行っていなければ減算されませんか?

対象サービスでは、身体拘束を行っていなくても、委員会、指針、研修などの必要な措置を実施していなければ、身体拘束廃止未実施減算の対象になることがあります。

Q4. 業務継続計画を作っていれば減算を防げますか?

計画の策定に加えて、計画に従い必要な措置を講じているかを確認する必要があります。事業所の実態に合わない計画を保管しているだけでは、適切な対応とはいえません。

Q5. 減算に気づかず請求した場合はどうしますか?

対象期間と利用者を確認し、指定権者へ相談します。請求済みの場合は、過誤申立てや再請求、利用者負担額の返金などが必要になることがあります。

Q6. 減算の届出は必要ですか?

減算によっては、体制等状況一覧表などによる届出が必要です。減算が解消したときにも届出が必要になる場合があるため、指定権者の案内を確認してください。

Q7. 減算率はすべてのサービスで同じですか?

同じではありません。同じ名称の減算でも、サービスによって減算率や対象となる単位数、適用期間が異なる場合があります。

Q8. 人員基準欠如減算の猶予措置は誰でも利用できますか?

利用できるとは限りません。突発的で想定困難な事情、必要人数から1割以内の減少、採用活動、期限内の報告など、定められた条件をすべて満たす必要があります。

関連する介護Wiki

  • 介護報酬とは
  • 介護報酬の加算とは
  • 介護事業所の人員配置基準とは
  • 業務継続計画未策定減算とは
  • 高齢者虐待防止措置未実施減算とは
  • 身体拘束廃止未実施減算とは
  • 介護報酬の返還とは
  • 過誤申立てとは
  • 運営指導とは

公式資料

最終更新:2026年8月

減算の対象サービス、減算率、適用期間、届出方法は変更される場合があります。厚生労働省と指定権者が公表する最新情報を必ず確認してください。

PAGE TOP