介護報酬の加算とは?算定要件・届出・記録の注意点をわかりやすく解説

介護報酬の加算とは、一定の人員配置、支援体制、サービス内容などの要件を満たした介護事業所に対して、基本報酬へ上乗せされる報酬です。

ただし、要件を満たしているだけで、すべての加算を自動的に算定できるわけではありません。加算によっては、事前の届出、計画書の作成、利用者への説明、実施記録、定期的な要件確認などが必要です。

この記事の要点

  • 加算は、質の高いサービスや一定の体制を評価する上乗せ報酬
  • 基本報酬とは別に、加算ごとの算定要件を満たす必要がある
  • 事前届出が必要な加算と、届出を必要としない加算がある
  • 人員、資格、計画、説明、記録など複数の要件が組み合わされる
  • 要件を満たさないまま請求すると、報酬返還につながる可能性がある
  • 令和8年6月以降の加算は、最新の届出様式を確認する必要がある

目次

  1. 介護報酬の加算とは
  2. 基本報酬と加算の関係
  3. 加算が設けられている目的
  4. 介護報酬の加算の主な種類
  5. 加算の算定要件
  6. 届出が必要な加算と不要な加算
  7. 加算を算定するまでの流れ
  8. 説明・同意・記録の注意点
  9. 算定開始後も要件確認が必要
  10. 要件を満たせなくなった場合
  11. 誤って算定した場合の対応
  12. 令和8年度の注意点
  13. 実務確認表
  14. よくある質問

介護報酬の加算とは

介護報酬の加算とは、国が定めた要件を満たす介護事業所に対して、基本報酬へ一定の単位数を上乗せする仕組みです。

介護サービスの質を高める取り組み、専門職の配置、職員の処遇改善、医療機関などとの連携、利用者の状態に応じた支援などが評価の対象になります。

加算の名称、単位数、算定要件、対象サービスはそれぞれ異なります。同じ名称の加算でも、介護サービスの種類によって要件や単位数が異なる場合があります。

重要

加算は、単に「良いサービスを行っている」という理由だけでは算定できません。告示、留意事項通知、関連通知、Q&Aなどに定められた要件を満たし、その事実を記録で説明できる状態にする必要があります。

基本報酬と加算の関係

介護報酬は、基本的に「基本報酬」「加算」「減算」を組み合わせて計算します。

介護報酬の単位数=基本報酬+加算-減算

基本報酬は、サービスの種類、要介護度、利用時間、施設規模などに応じて定められる基本部分です。

これに、事業所の体制や実際に提供した支援に応じた加算が上乗せされます。一方、人員基準などを満たさない場合は、減算が適用されることがあります。

介護報酬全体の仕組みや計算方法は、次の記事で詳しく解説しています。

介護報酬とは?仕組み・計算方法・加算と減算をわかりやすく解説

介護報酬に加算が設けられている目的

加算には、介護事業所のさまざまな取り組みを報酬面から評価し、介護サービスの質を高める目的があります。

主な目的は次のとおりです。

  • 介護職員の確保と処遇改善を進める
  • 専門職や一定数以上の職員を配置する
  • 利用者の自立支援や重度化防止を進める
  • 認知症の利用者に対する支援体制を整える
  • 医療機関や他の介護事業所との連携を進める
  • 看取りや緊急時に対応できる体制を整える
  • 口腔・栄養・機能訓練などの支援を充実させる
  • 科学的介護情報システム(LIFE)を活用する
  • 業務改善や介護現場の生産性向上を進める

加算は事業所の収入を増やすためだけの制度ではありません。国が求める介護サービスの方向性を、報酬によって後押しする仕組みでもあります。

介護報酬の加算の主な種類

介護報酬には多くの加算があります。ここでは、加算が評価する内容を基準に大きく分類します。

職員の配置や資格を評価する加算

一定数以上の職員や、特定の資格・経験を持つ職員を配置している事業所を評価する加算です。

職員数だけでなく、常勤換算、勤続年数、資格、勤務時間、利用者数に対する割合などが要件になる場合があります。

サービスの実施内容を評価する加算

利用者に対して、個別の計画に基づく機能訓練、栄養管理、口腔管理、認知症ケアなどを実施した場合に算定する加算です。

計画を作成するだけでなく、計画に基づく実施、評価、見直し、利用者や家族への説明まで求められる場合があります。

他の事業所や医療機関との連携を評価する加算

医師、歯科医師、医療機関、居宅介護支援事業所、他の介護サービス事業所などと連携して支援した場合に算定する加算です。

連携先の名称、連携日、共有した情報、助言内容、支援への反映などを記録することが重要です。

職員の処遇改善を評価する加算

介護職員等処遇改善加算は、介護現場で働く職員の賃金改善や職場環境の改善などを目的とした加算です。

算定にあたっては、加算区分ごとの要件確認、処遇改善計画書の提出、賃金改善の実施、実績報告などが必要です。

LIFEへの情報提出や活用を評価する加算

科学的介護情報システム(LIFE)へ利用者の状態や支援内容に関する情報を提出し、その結果をサービス改善に活用することを評価する加算があります。

単にデータを送信するだけでなく、返された情報を確認し、計画や支援内容の改善につなげることが求められます。

業務改善や生産性向上を評価する加算

介護ロボットや情報通信技術の活用、業務分担の見直し、委員会の設置などを通じて、介護現場の生産性向上に取り組む事業所を評価する加算があります。

対象となるサービスや具体的な要件は加算ごとに異なるため、最新の通知を確認する必要があります。

加算の算定要件

加算を算定するには、加算ごとに定められた要件を満たす必要があります。

主な算定要件には、次のようなものがあります。

  • 必要な資格を持つ職員を配置している
  • 必要な人数や常勤換算数を満たしている
  • 委員会や会議を定期的に開催している
  • 研修を実施している
  • 利用者ごとの計画を作成している
  • 利用者または家族へ説明している
  • 必要に応じて同意を得ている
  • 計画に基づく支援を実施している
  • 支援内容や連携内容を記録している
  • 定期的に評価と見直しを行っている
  • LIFEなどへ期限内に情報を提出している
  • 指定権者へ必要な届出を行っている

算定要件は加算ごとに異なります

すべての加算で、上記の項目が必要になるわけではありません。対象サービス、加算区分、利用者の状態などによって要件が異なるため、必ず該当する告示・通知を確認してください。

加算の要件を確認する公式資料

加算の算定可否を判断するときは、主に次の資料を確認します。

  1. 告示:単位数や基本的な算定要件
  2. 留意事項通知:要件の具体的な取扱い
  3. 関連通知:計画書や手続きなどの詳細
  4. 介護報酬改定Q&A:実務上の疑問に対する国の回答
  5. 指定権者の案内:提出期限、提出方法、必要書類など

概要資料だけでは、細かな算定要件まで確認できない場合があります。概要資料を入口として、告示、通知、Q&Aまで確認することが重要です。

届出が必要な加算と不要な加算

加算には、算定前に指定権者への届出が必要なものと、届出を必要としないものがあります。

届出が必要な加算

事業所の人員配置や運営体制などを指定権者へ届け出たうえで算定する加算です。

一般的には、次のような書類を提出します。

  • 介護給付費算定に係る体制等に関する届出書
  • 介護給付費算定に係る体制等状況一覧表
  • 加算ごとに指定された届出書や確認表
  • 勤務形態一覧表
  • 資格証の写し
  • 組織図や平面図
  • 計画書などの添付資料

必要書類は、サービスの種類、加算、指定権者によって異なります。

届出を必要としない加算

体制届の提出を必要とせず、利用者の状態や実際に行った支援内容に応じて請求する加算もあります。

ただし、届出が不要でも、算定要件を満たしたことを示す計画、説明、同意、実施記録などは必要です。

届出不要=記録不要ではありません

運営指導などで算定根拠を確認されたときに、要件を満たしていたことを記録から説明できなければ、返還を求められる可能性があります。

算定開始日は指定権者によって確認する

届出が必要な加算は、届出の受理日やサービスの種類などによって算定開始日が決まります。

提出期限を過ぎると、予定していた月から算定できない場合があります。具体的な期限や提出方法は、事業所を所管する指定権者の最新案内を確認してください。

加算を算定するまでの流れ

加算の算定を開始するときは、次の順番で確認すると抜け漏れを防ぎやすくなります。

  1. 自事業所が対象となる加算を確認する
  2. 告示・通知・Q&Aで算定要件を確認する
  3. 現在の人員配置や運営状況と照合する
  4. 不足している体制、規程、計画、研修などを整える
  5. 必要な提出書類と提出期限を確認する
  6. 指定権者へ届出を行う
  7. 利用者や家族への説明・同意が必要か確認する
  8. 算定開始日を確認する
  9. 請求システムへ加算情報を設定する
  10. 算定根拠となる記録を継続して保存する

請求システムの設定だけで算定を始めない

届出や利用者への説明が終わる前に請求を開始すると、誤請求になる可能性があります。届出書の控え、受理日、算定開始日を確認してから設定してください。

説明・同意・記録の注意点

加算を適正に算定するためには、実際に要件を満たすだけでなく、その事実を記録として残すことが重要です。

利用者や家族への説明

加算によっては、サービス内容や利用者負担への影響を説明する必要があります。

重要事項説明書や契約書の変更が必要になる場合もあるため、算定開始前に確認してください。

同意の記録

同意が要件となっている加算では、同意を得た日、説明した内容、説明を受けた人などを確認できる状態にします。

署名が必要か、電磁的な方法でもよいかなどは、加算の要件や指定権者の取扱いを確認する必要があります。

実施内容の記録

記録には、単に「実施した」と書くだけでなく、次のような内容を残します。

  • 実施日と実施時間
  • 実施した職員
  • 具体的な支援内容
  • 利用者の状態や反応
  • 評価結果
  • 計画の見直し内容
  • 関係機関との連携内容

必要な記録内容は加算ごとに異なります。記録様式を作る場合は、算定要件と一つずつ対応させることが重要です。

算定開始後も要件確認が必要

加算は、一度届出をすれば無条件で算定し続けられるものではありません。

職員の退職、勤務時間の変更、利用者数の増減、資格要件の変更などによって、算定要件を満たさなくなる場合があります。

特に人員配置や利用者割合が関係する加算は、毎月または定められた期間ごとに数値を確認する必要があります。

事業所内では、次のように担当を分けて管理すると確認漏れを防ぎやすくなります。

  • 管理者:算定要件全体の確認
  • 人事・労務担当:資格、勤務時間、常勤換算の確認
  • 現場責任者:計画、実施、評価記録の確認
  • 請求担当:算定日、回数、請求データの確認

加算の要件を満たせなくなった場合

算定中の加算について要件を満たせなくなった場合は、そのまま請求を続けてはいけません。

基本的には次の対応が必要です。

  1. 要件を満たせなくなった日と原因を確認する
  2. 影響する利用者と請求月を確認する
  3. 請求前であれば加算を外す
  4. 必要に応じて指定権者へ変更・終了の届出を行う
  5. 請求済みの場合は指定権者や国保連へ相談する
  6. 再発防止のため確認方法を見直す

加算によって、要件を満たさなくなった月から算定できない場合や、一定期間の実績で判断する場合があります。自己判断せず、該当する通知と指定権者の取扱いを確認してください。

加算を誤って算定した場合の対応

要件を満たしていない加算を請求した場合や、回数・対象者を誤って請求した場合は、請求の修正が必要です。

請求前に誤りが分かった場合

請求データを修正し、正しい内容で請求します。

請求後、支払い前に誤りが分かった場合

請求の取下げなどが可能か、国保連や指定権者へ確認します。

支払い後に誤りが分かった場合

過誤申立てなどにより、請求を取り下げて再請求する手続きが必要になることがあります。

利用者負担額も変わる場合は、利用者への説明、追加請求または返金も必要です。

誤りを放置しない

自主点検で誤りが見つかった場合は、対象期間と対象者を確認し、指定権者へ相談してください。放置すると、運営指導や監査で多額の返還につながる可能性があります。

令和8年度の加算に関する注意点

令和8年度介護報酬改定では、介護職員等処遇改善加算の見直しなどが行われています。

厚生労働省は、令和8年6月以降の加算算定に使用する体制届出関係の様式と、令和8年度の処遇改善計画書・実績報告書などを公表しています。

令和6年度の様式を保存している事業所は、そのまま使用せず、令和8年度の最新様式かどうかを確認してください。

令和8年度に確認すること

  • 令和8年6月以降に対応した体制届の様式か
  • 算定する加算の区分と要件に変更がないか
  • 対象サービスに変更がないか
  • 処遇改善計画書が令和8年度版か
  • 提出期限と提出先に変更がないか
  • 最新のQ&Aが公表されていないか

改定内容は加算やサービスによって異なります。令和8年度改定の概要だけで判断せず、最新の告示、通知、様式、Q&A、指定権者の案内を確認してください。

介護報酬の加算に関する実務確認表

  • □ 自事業所が対象となる加算を確認した
  • □ 最新の告示・通知・Q&Aを確認した
  • □ 加算の対象となる利用者を確認した
  • □ 必要な人員数と資格を確認した
  • □ 常勤換算や利用者割合を確認した
  • □ 必要な計画書や記録様式を用意した
  • □ 利用者や家族への説明・同意の要否を確認した
  • □ 体制届の提出が必要か確認した
  • □ 最新の届出様式を使用している
  • □ 提出期限と算定開始日を確認した
  • □ 請求システムの設定を確認した
  • □ 算定根拠となる記録を保存している
  • □ 算定開始後も定期的に要件を確認している
  • □ 要件を満たせなくなった場合の連絡方法を決めている

加算の算定要件に不安はありませんか?

介護報酬の加算は、人員配置、届出、計画、説明、記録、請求を一体で確認する必要があります。介護パートナーでは、介護事業者向けの実務情報と無料ガイドをLINEでお届けしています。

介護報酬の加算に関するよくある質問

Q1. 加算は要件を満たせば自動的に算定できますか?

自動的に算定できるとは限りません。加算によっては、指定権者への事前届出、計画書の作成、利用者への説明や同意、実施記録などが必要です。

Q2. 届出を出す前に加算を請求できますか?

事前届出が必要な加算は、定められた手続きを終え、算定開始日を確認してから請求します。届出前の期間へ自由にさかのぼって算定できるものではありません。

Q3. 届出が不要な加算なら記録も不要ですか?

いいえ。届出が不要でも、加算の算定要件を満たしたことを示す計画、説明、同意、実施内容などの記録が必要です。

Q4. 加算の届出期限は全国共通ですか?

サービスの種類や届出内容によって取扱いが異なります。また、提出方法や必要書類は指定権者ごとに案内されます。事業所を所管する指定権者へ確認してください。

Q5. 職員が退職して要件を満たせなくなった場合はどうしますか?

要件を満たせなくなった日と影響範囲を確認し、請求の停止や変更・終了の届出が必要かを確認します。加算によって取扱いが異なるため、該当する通知と指定権者の案内を確認してください。

Q6. 加算を誤って請求した場合はどうなりますか?

支払い前であれば請求内容を修正します。支払い後の場合は、過誤申立てなどの手続きが必要になることがあります。利用者負担が変わる場合は、返金や追加請求も必要です。

Q7. 加算の算定要件はどこで確認できますか?

厚生労働省が公表する告示、留意事項通知、関連通知、介護報酬改定Q&Aで確認します。届出方法や提出期限については、指定権者の案内も確認してください。

Q8. 令和8年度は届出様式が変わっていますか?

厚生労働省は、令和8年6月以降の加算算定に対応した届出様式を公表しています。過去の様式を使わず、提出時点の最新版を確認してください。

関連する介護Wiki

  • 介護報酬とは
  • 介護報酬の減算とは
  • 介護職員等処遇改善加算とは
  • 介護事業所の人員配置基準とは
  • 介護報酬の返還とは
  • 運営指導とは

公式資料

最終更新:2026年8月

加算の算定要件、届出様式、提出期限は変更される場合があります。厚生労働省と指定権者が公表する最新情報を必ず確認してください。

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