結論|処遇改善加算の返還とは
- ⚠️ 賃金改善額が加算額を下回ると返還対象になる
- ⚠️ 算定要件(キャリアパス・職場環境等)を満たせなかった場合も返還対象
- ⚠️ 不正請求と認定されると返還額の40%が追加で課される
- ✅ 実績報告前に不足額を補填すれば返還を回避できるケースがある
- ✅ 年度を通じた定期点検が最大の防止策
出典:厚生労働省 老発0313第6号(令和8年3月13日)/介護職員等処遇改善加算に関するQ&A(第1版・第2版・第3版)
処遇改善加算の「返還」は、他人事ではありません。
全国各地で、運営指導・監査の結果として数百万円から数千万円規模の返還を命じられた事業所が公表されています。なかには指定取消しにまで発展したケースもあります。
「うちはちゃんとやっている」と思っていても、書類の不備・計算ミス・周知の未実施など、気づかないうちに返還リスクが積み上がっていることがあります。
この記事では、返還が起きる仕組み・よくある事例・今すぐできる防止策を、厚生労働省の通知とQ&Aをもとに徹底解説します。
📌30秒でわかる処遇改善加算の返還【まずはここだけ】
処遇改善加算の返還は、算定要件を満たしていなかった場合や、賃金改善額が加算額を下回った場合などに求められます。
30秒でポイントを確認
⚠️ 返還になる主な理由
賃金改善額の不足・算定要件未達・不正請求
💰 返還額
不足額または対象期間の加算額
🚨 40%加算
虚偽申請など不正請求の場合のみ
✅ 回避できる可能性
実績報告前なら不足分を補填できるケースがあります
📅 最も重要な対策
毎月、賃金改善額と加算受入額を確認すること
この記事では、返還になるケースや行政処分事例、返還額の考え方、返還を防ぐための実務対応まで、厚生労働省の通知・Q&Aをもとにわかりやすく解説します。
💡介護パートナーPOINT
返還になる事業所は「制度を知らない」よりも、「忙しくて確認できていない」ケースが非常に多いです。計画書を出して終わり、実績報告書を出して終わり、という運営が最もリスクを高めます。この記事を読んで、今日から何を確認すればよいかを持ち帰ってください。
この記事はこんな方におすすめです
- 処遇改善加算の返還リスクがあるか確認したい方
- 運営指導・監査への備えをしたい方
- 返還になるケースや行政処分事例を知りたい方
- 実績報告書を提出する前に最終確認したい方
- 返還を防ぐための実務上のポイントを知りたい方
この記事でわかること
- 処遇改善加算の返還とは何か、返還が必要になるケース
- 返還命令に至るまでの流れ(運営指導・監査・行政処分)
- 全国で実際にあった行政処分事例(群馬県・福岡市・大阪市)
- よくある返還事例6パターンと実際の失敗ケーススタディ
- 返還額の考え方と40%加算金の仕組み
- 返還を防ぐための自己点検チェックリスト
- 実績報告前に自主的に対応できるケースと相談のポイント
処遇改善加算の「返還」とは何か
処遇改善加算の返還とは、事業所が受け取った処遇改善加算の一部または全部を、都道府県・市区町村等の指定権者に返還することを指します。
厚生労働省の通知では次のように明示されています。
「算定要件を満たしていない場合、虚偽・不正の手段で受給した場合などは、既に支給された処遇改善加算の一部、または全部を不正受給として返還させることができる」
(出典:厚生労働省 老発0313第6号、令和8年3月13日)
| 種類 | 内容 | ペナルティの重さ |
|---|---|---|
| 要件不備による返還 | 算定要件(賃金改善・キャリアパス等)を満たしていなかった | 返還額のみ(40%加算なし) |
| 不正請求による返還 | 虚偽の申告・書類改ざん・意図的な不正 | 返還額+40%の加算金(介護保険法第22条第3項) |
目次
💡介護パートナーPOINT
「返還」と「不正請求」は別物です。うっかりミスによる要件不備は「返還」ですが、虚偽申告・書類改ざんは「不正請求」として、刑事罰の対象になる可能性もあります。問題が発覚しても誠実に対応することが、処分を最小限に抑える唯一の手段です。監査が入った際に書類を改ざんして乗り切ろうとすることは、最悪の選択です。
返還命令までの流れ

| ステップ | 内容 | 事業所が取るべき行動 |
|---|---|---|
| ① 実績報告の提出 | 毎年7月末(都道府県により異なる)に実績報告書を提出 | 加算額と賃金改善額の照合を事前に実施 |
| ② 運営指導(実地指導) | 指定権者が計画書・実績・賃金台帳等を確認 | 書類・記録の整備と2年間の保存 |
| ③ 指導・改善勧告 | 不備があれば文書指導または改善勧告 | 指摘内容に従い速やかに改善・報告 |
| ④ 監査 | 不正請求の疑いや指導不応の場合に実施 | 誠実に対応。書類改ざんは厳禁 |
| ⑤ 行政処分 | 返還命令・効力停止・指定取消等 | この段階になる前に自主的に相談・対応 |
💡介護パートナーPOINT
返還リスクへの対応は「早ければ早いほど有利」です。実績報告前に不備を発見した場合、賞与や一時金で追加配分することで返還を回避できるケースがあります(介護職員等処遇改善加算に関するQ&A第3版 問1-9、介護保険最新情報Vol.1226)。問題を隠すことは絶対に避けてください。
全国の行政処分の実例|処遇改善加算が関わった事例
以下は、各自治体が公表している実際の行政処分事例です。いずれも「処遇改善加算の不適切な取り扱い」が処分の要因の一つになっています。
| 自治体・処分日 | 事業所の種類 | 処分の内容 | 返還額(概算) | 処遇改善加算に関連する問題 |
|---|---|---|---|---|
| 群馬県 令和5年4月10日 | 訪問介護事業所 | 指定の取消し | 約487万円 | 当該事業所の職員ではない者に支給したほか、支給額が受領額を上回っていないにもかかわらず、上回ったとする実績報告を提出し不正請求(出典:群馬県「介護保険事業者の行政処分について」令和5年4月10日) |
| 福岡市 令和6年公表 | 訪問介護事業所 | 指定の取消し | 約4,491万円 | 虚偽の訪問記録を作成して給付費を請求。加えて管理者の兼務による人員基準違反が長期間継続。人員基準違反により処遇改善加算の前提要件も崩れた(出典:福岡市「介護サービス事業所の行政処分について」) |
| 大阪市 令和7年3月1日 | 複数の介護・障害福祉事業所 | 指定の取消し | 約2億1,576万円 | 介護給付費(加算額を含む)の不正請求が判明。加算を含む介護報酬の全額が返還対象(出典:大阪市「介護保険事業者及び障がい福祉サービス事業者の指定の取消し並びに介護給付費の返還請求について」令和7年3月) |
💡介護パートナーPOINT
これらの事例に共通するのは、「処遇改善加算だけが単独で問題になったわけではない」という点です。人員基準違反・虚偽記録・不正請求が積み重なる中で、処遇改善加算も連動して問題化しています。「加算の書類だけ気をつければいい」という発想ではなく、事業所運営全体の適正性が処遇改善加算の適正算定を支える土台です。
▶ 各自治体の最新の行政処分情報は、都道府県・市区町村の公式サイトで確認できます。
よくある返還事例6パターン
① 賃金改善額が加算額を下回っていた(最多事例)
処遇改善加算では「受け取った加算額以上の賃金改善を実施すること」が絶対要件です。
| 状況 | 取扱い |
|---|---|
| 実績報告前に不足を発見 | 賞与・一時金で追加配分することで返還回避の可能性あり(Q&A第3版 問1-9) |
| 実績報告後に不足が判明 | 原則として返還対象。指定権者に速やかに相談 |
| 加算を運営費・設備費に流用 | 不正請求として返還額+40%加算のペナルティ |
💡介護パートナーPOINT
職員の退職・採用・休職・育休等で、年度途中に想定していた賃金改善額と実際の改善額がずれることが頻繁に起きます。「年度末に計算すればいい」では手遅れになります。毎月の給与計算のタイミングで、加算受入額との差額を確認する習慣が最大の予防策です。
② キャリアパス要件を満たしていなかった
「誓約して算定したが、年度内に整備できなかった」という場合は返還対象になります。
「原則として、キャリアパス要件ⅠからⅢまで及び職場環境等要件の要件整備を誓約した上で処遇改善加算を取得した事業所等については、実績報告書において要件の整備について報告しなければ返還対象となる」
(介護職員等処遇改善加算に関するQ&A第2版・令和7年3月17日)
- 就業規則・賃金規程にキャリアパスの記載がない(要件Ⅰ)
- 研修計画は書面にあるが実施していない・記録がない(要件Ⅱ)
- 全職員への周知をしていない
③ 職場環境等要件を満たしていなかった
- 取組を実施したが、実施記録(議事録・写真・参加者リスト等)がない
- 年度途中から取り組んだが年度当初の計画書に記載がなかった
- 取組内容が形式だけで実態を伴っていない
④ 計画書と実績報告書の内容が一致していなかった
| 計画書の記載 | 実績での問題 |
|---|---|
| 「全員に月額均等支給」と記載 | 退職者への未支給・一部職員への未反映 |
| 「賞与で年2回支給」と記載 | 年度末に一括支給になってしまった |
| 「介護職員のみ対象」と記載 | 実際には看護師にも支給していた |
⑤ 周知が不十分または記録が残っていなかった
運営指導で最も多く指摘される事項のひとつです。
- 掲示板に掲示したが、確認のサインをもらっていない
- 口頭で説明したが書面の記録がない
- 新入職員に対して入職時の周知をしていない
⑥ 退職者・架空の職員への支給を計上していた(不正請求)
群馬県の行政処分事例(令和5年4月)では、当該事業所の職員ではない者に支給したほか、受領額を上回っていないにもかかわらず上回ったとする実績報告を提出した事業所が、約487万円の返還命令と指定取消処分を受けています。このケースでは返還額の40%加算も課されています。
実際によくある失敗ケーススタディ
| 事例 | 状況 | 原因 | 結果 | 防止策 |
|---|---|---|---|---|
| 事例① 賞与だけで支給していた | 全額を年2回の賞与で配分していた | 加算区分に応じた月額賃金改善要件を満たしていなかった | 実績報告で月額改善要件の不足を指摘され、返還対象に | 年度当初に月額改善要件を確認し、毎月の賃金に反映する計画を立てる |
| 事例② 管理者に高額配分したが根拠なし | 介護職員の3倍の配分を管理者に支給していた | 配分の根拠(業務兼務の実態・配分根拠規程)を書面化していなかった | 運営指導で「著しく偏った配分の根拠を示せ」と指摘。説明できず改善指導 | 配分の根拠を計画書に明記し、職員への周知も実施する |
| 事例③ パートへの配分を忘れていた | 正規職員への配分のみ実施し、非常勤・パートへの配分が漏れていた | 「パートは対象外」という誤解 | 実績報告で配分対象者の漏れを指摘。後から一時金として配分し対処 | 計画書に「正規・非常勤を問わず全介護従事者を対象」と明記し、配分台帳で管理 |
| 事例④ キャリアパス規程が就業規則にない | 計画書にはキャリアパス要件Ⅰ充足と記載したが、就業規則にキャリアパスの記載がなかった | 「別紙規程で整備」と思っていたが就業規則への反映を失念 | 運営指導で就業規則との不整合を指摘。改善勧告を受けた | 就業規則または賃金規程に、キャリアパスの内容を具体的に記載する |
返還額の考え方
| ケース | 返還額の目安 |
|---|---|
| 賃金改善額が加算額を下回った | 不足した差額分 |
| 算定要件を満たせなかった | 要件を満たせなかった期間の加算全額 |
| 不正請求(虚偽申告・改ざん等) | 不正受領額+その40%(介護保険法第22条第3項) |
40%加算金の実額イメージ
500万円の不正受領があった場合、200万円が追加されて計700万円の返還・納付が必要になります。また、返還対象期間は「不備があった月だけ」とは限らず、複数年にさかのぼることがあります。
返還を防ぐ方法|年間スケジュールで管理する
| 時期 | 確認・実施すること |
|---|---|
| 4月(年度当初) | 計画書提出・加算見込み額の計算・配分計画の確定・全職員への周知・署名取得 |
| 毎月 | 当月の賃金改善額を集計し、加算受入額との差額を確認 |
| 6〜7月(実績報告前) | 年間の加算受入額と賃金改善額を照合。不足が見込まれれば賞与・一時金での補填を検討 |
| 7月末(実績報告期限) | 実績報告書を提出。計画書・賃金台帳との整合を最終確認 |
| 随時 | 採用・退職・休職発生時は配分計画への影響を確認。変更が必要な場合は変更届を提出 |
💡介護パートナーPOINT
運営指導で実際に確認されやすいのは「配分割合の計算」よりも「配分根拠の書面化」「周知記録」「賃金台帳との整合」の3点です。計算が正しくても、書類でそれを証明できなければ指摘されます。「正しくやっている事業所が損をしない」ためにも、記録・保存の習慣が不可欠です。
返還リスク 自己点検チェックリスト
| 確認項目 | チェック |
|---|---|
| 毎月の賃金改善額を集計し、加算受入額と照合している | □ |
| 処遇改善計画書の内容を全職員に周知し、確認の記録(署名等)がある | □ |
| キャリアパス要件に関する規程(就業規則・賃金規程)が整備されている | □ |
| 職場環境等要件の取組を実施し、記録・証拠が残っている | □ |
| 実績報告書の数字が計画書・賃金台帳と一致している | □ |
| 計画書の変更が生じた場合、変更届を提出している | □ |
| 新入職員への周知を入職時に実施している | □ |
| 月額賃金改善要件(加算区分に応じた割合)を満たしている | □ |
| 賃金台帳・支給明細を2年間保存している | □ |
| 実績報告書を期限(7月末等)までに提出している | □ |
自主的な修正・事前相談が有効なケース
| 気づいたタイミング | 対応策 |
|---|---|
| 実績報告前に賃金改善額の不足を発見 | 不足分を賞与・一時金として追加配分することで返還を回避できる可能性あり(Q&A第3版 問1-9/介護保険最新情報Vol.1226) |
| 計画書の記載ミスに気づいた | 速やかに指定権者に連絡し、変更届または修正の相談を行う |
| キャリアパス要件の書類が整備できていなかった | 令和8年度特例要件の活用も含め、次年度計画書提出前に整備する(Q&A第2版参照) |
| 周知の記録がない | 遡って周知記録を整備し、今後は署名台帳を作成する |
💡介護パートナーPOINT|「自主返還」という選択肢
運営指導で発覚する前に自主的に不備を申告・返還する「自主返還」は、行政処分の重さを軽減する可能性があります。専門家に相談する際は、「給与台帳」「処遇改善計画書」「国保連入金額」「職員別配分表」をそろえると、返還リスクの有無を具体的に確認しやすくなります。
計画書・実績報告書の作成や返還リスクの確認をサポートします
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運営指導・監査との関係
| 確認される書類・事項 | よくある指摘 |
|---|---|
| 処遇改善計画書 | 記載内容が不十分・変更届の未提出 |
| 実績報告書 | 加算額と改善額の乖離・計算誤り |
| 賃金台帳・給与明細 | 改善額の裏付けが取れない・記録の不整備 |
| 就業規則・賃金規程 | キャリアパス要件の規定がない・内容が実態と合わない |
| 周知の記録 | 周知した証拠がない(署名・掲示記録等) |
| 職場環境等要件の取組記録 | 取組の実施記録・証拠がない |
▶ 運営指導の全体対策については「介護事業所の運営指導対策ガイド(準備中)」で詳しく解説します。
返還リスク 早見表|ケース別の対応一覧
| 返還リスクのケース | 返還の可否 | ペナルティ | 回避策 |
|---|---|---|---|
| 賃金改善額 < 加算額(実績報告前に判明) | △ 回避可能 | なし(補填で対応) | 賞与・一時金で追加配分 |
| 賃金改善額 < 加算額(実績報告後に判明) | ◎ 返還対象 | 差額分の返還 | 指定権者に速やかに相談 |
| キャリアパス要件の未整備 | ◎ 返還対象 | 当該期間の加算全額 | 年度内に整備・記録 |
| 職場環境等要件の記録なし | ◎ 返還対象リスク | 当該期間の加算全額 | 実施記録・証拠の作成 |
| 計画書と実績の乖離 | ◎ 返還対象リスク | 状況による | 変更届を随時提出 |
| 周知の未実施 | ◎ 算定要件違反 | 状況による | 署名台帳の整備 |
| 虚偽申告・書類改ざん | ◎ 不正請求 | 返還額+40%加算金 | 絶対に行わない |
よくある質問(FAQ)
Q1. 賃金改善額が加算額を下回った場合、必ず返還になりますか?
原則として返還対象となります。ただし、実績報告前に不足額を把握した場合は、賞与や一時金として追加配分することで返還を避けられる取扱いが認められています(介護職員等処遇改善加算に関するQ&A第3版 問1-9/介護保険最新情報Vol.1226)。実績報告の提出前に不足額を試算し、指定権者の取扱いも確認してください。
Q2. 意図せずミスをした場合でも返還になりますか?
はい、意図的かどうかに関わらず、算定要件を満たしていない場合は返還対象となります。ただし、虚偽申告や書類改ざんがない場合は「不正請求」とはみなされず、40%加算は課されません。早期に自主的に相談することが重要です。
Q3. 返還はいつの分まで遡りますか?
返還対象期間はケースによって異なります。不備があった月だけの場合もあれば、要件未充足の状態が続いていた場合は複数年にさかのぼることもあります。指定権者が調査の上で判断します。
Q4. 返還命令を受けた場合、事業所名は公表されますか?
行政処分(指定取消・効力停止等)を受けた場合は、都道府県・市区町村の公式サイトで事業所名・処分内容が公表されます。事業所の信用に直接影響します。
Q5. キャリアパス要件の整備が間に合わなかった場合は必ず返還ですか?
原則として返還対象になります。ただし、令和8年度については「特例要件」が設けられており、令和8年度計画書提出時点で特例要件を満たしている場合に限り、救済的な取扱いがある場合があります(Q&A第2版参照)。詳細は指定権者または専門家にご確認ください。
Q6. 実績報告書を提出し忘れた場合はどうなりますか?
実績報告の未提出は算定要件の違反となり、加算の返還や行政指導につながる可能性があります。提出期限に気づいた時点で、速やかに指定権者へ連絡し対応してください。
Q7. 運営指導で指摘されても、すぐに返還にはなりませんか?
通常、運営指導での指摘後は改善指導→改善報告という流れを経ます。指摘に従って誠実に対応すれば、即座に返還命令が出るわけではありません。問題は、指導に従わなかった場合や虚偽報告をした場合に監査・行政処分へ進む点です。
Q8. 返還を避けるために最も重要なことは何ですか?
毎月の賃金改善額と加算受入額の照合を習慣化することです。加えて、計画書・実績報告書・賃金台帳・周知記録の整合性を常に保つことが最大の防止策です。不安な場合は実績報告前に社労士に確認することをお勧めします。
Q9. 複数の事業所を運営している場合、法人単位で返還が求められることはありますか?
処遇改善加算は法人単位での申請も可能なため、法人全体の賃金改善額と加算額の整合が必要になります。一部の事業所だけに問題があっても、法人単位での申請をしている場合は法人全体の計算に影響することがあります。複数事業所を運営している場合は特に、法人全体での整合確認を定期的に実施してください。
Q10. 処遇改善加算の返還リスクを確認するためにどんな書類を準備すべきですか?
専門家に相談する際は「給与台帳」「処遇改善計画書」「国保連入金額の記録」「総勘定元帳」「職員別配分表」をそろえると、返還リスクの有無を具体的に確認しやすくなります。これらは実績報告書を作成する際にも必要な書類です。
社労士への相談をおすすめするケース
| こんな状況の場合 | リスクの内容 |
|---|---|
| 賃金改善額と加算受入額の差額が把握できていない | 返還対象になっていても気づかない可能性がある |
| 計画書の記載内容と実際の支給内容がずれている気がする | 指摘された場合に説明ができず行政処分につながる可能性 |
| キャリアパス要件の書類が整備されていない | 返還・加算区分の降格リスクあり |
| 職場環境等要件の取組記録がない・不十分 | 運営指導で指摘される可能性が高い |
| 複数事業所を運営しており、法人全体の管理が追いついていない | 事業所間の整合性の確認が必要 |
| 過去に運営指導で処遇改善加算の指摘を受けたことがある | 同じ問題が繰り返されると監査につながるリスクがある |
計画書・実績報告書の作成や返還リスクの確認をサポートします
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この記事の結論
- ⚠️ 処遇改善加算の返還は「意図せずミス」でも発生する。他人事ではない
- ⚠️ 最も多い返還事由は「賃金改善額の不足」「要件整備の未実施」「周知・記録の不備」の3つ
- ⚠️ 不正請求と認定されると、返還額の40%が追加で課される
- ✅ 実績報告前に不足を発見した場合、賞与・一時金での補填で返還を回避できる場合がある
- ✅ 年間を通じた定期点検(毎月の照合・書類保存・周知記録)が最大の防止策
- 💬 少しでも不安があれば、実績報告の提出前に社労士に相談することが最善策
返還リスクは日々の確認で大きく減らせます
返還事例の多くは、「制度を知らなかった」ことではなく、賃金改善額の確認不足や書類・記録の不備によって発生しています。
この記事で紹介したチェックポイントを定期的に確認し、少しでも不安がある場合は、実績報告書を提出する前に指定権者や専門家へ相談することをおすすめします。
今日から確認すること
返還リスクを防ぐために、まずは以下の項目を確認してみましょう。5分ほどで確認できる内容ばかりですが、運営指導や実績報告の際に大きな差になります。
| 今すぐ確認・実施すること | チェック |
|---|---|
| 今年度の賃金改善額と加算受入額の差額を計算する | □ |
| 処遇改善計画書の内容が全職員に周知されているか確認する | □ |
| キャリアパス要件の規程(就業規則・賃金規程)を確認する | □ |
| 職場環境等要件の取組記録が残っているか確認する | □ |
| 実績報告書の提出期限を指定権者に確認する | □ |
編集部からひとこと
処遇改善加算の返還は、「知らなかった」では済まされません。一方で、多くの返還事例は日頃の確認や記録の積み重ねで防ぐことができます。この記事が安心して制度を運用するための参考になれば幸いです。
更新履歴
- 2026年7月18日 初版公開
参考・引用資料:
- 厚生労働省「介護職員等処遇改善加算等に関する基本的考え方並びに事務処理手順及び様式例の提示について(令和8年度分)」(令和8年3月13日 老発0313第6号)
- 「介護職員等処遇改善加算に関するQ&A(第1版)」(介護保険最新情報Vol.1479)
- 「介護職員等処遇改善加算に関するQ&A(第2版)」(令和7年3月17日)
- 「介護職員等処遇改善加算等に関するQ&A(第3版)」(介護保険最新情報Vol.1226、令和6年6月20日)
- 群馬県「介護保険事業者の行政処分について」(令和5年4月10日)
- 福岡市「介護サービス事業所の行政処分について」
- 大阪市「介護保険事業者及び障がい福祉サービス事業者の指定の取消し並びに介護給付費の返還請求について」(令和7年3月)
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