📋 介護パートナー編集部作成
厚生労働省の通知・Q&Aをもとに介護パートナー編集部が作成・確認しています。制度改正時は随時更新します。
目次
結論|月額賃金改善要件とは
- ✅ 加算Ⅳ相当の加算額の1/2以上を、毎月の賃金(基本給または毎月払われる手当)で改善すること
- ✅ 基本給に組み込んでもOK。毎月払われる手当でもOK
- ✅ 時給・日給の引き上げも基本給の引き上げとして扱ってよい(Q&A第1版 問1-4)
- ⚠️ 賞与・一時金のみでの月額賃金改善要件の充足はできない
- ⚠️ 基本給を下げて手当を新設する場合、各職員の賃金水準が低下しないよう努めること(Q&A第1版 問3)
出典:厚生労働省「介護職員等処遇改善加算に関するQ&A(第1版)」(令和8年3月13日)/老発0313第6号(令和8年3月13日)
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- 月額賃金改善要件の定義と計算方法
- 基本給・手当・賞与の使い分けと対象可否
- 基本給の減額・付け替えのNG事例
- 最低賃金との関係(Q&A原文の正確な解説)
- 給与規程・計画書への反映方法
- 運営指導での確認ポイント
こんな方におすすめ
- ✔ 処遇改善加算の月額賃金改善要件が何かわからない
- ✔ 処遇改善加算を基本給に組み込んでいいか迷っている
- ✔ 賞与でまとめて払おうとしている
- ✔ 最低賃金との関係が気になっている
- ✔ 給与規程の修正方法がわからない
月額賃金改善要件 早見表
| 賃金の種類 | 月額改善要件への算入 |
|---|---|
| 基本給(月給・時給・日給) | ◎ 算入可 |
| 職能手当・資格手当・役職手当・地域手当(毎月払われるもの) | ◎ 算入可 |
| 処遇改善手当(毎月払われるもの) | ◎ 算入可 |
| 通勤手当・扶養手当(個人的事情による手当) | ✗ 算入不可 |
| 賞与・一時金 | ✗ 算入不可 |
| 研修費・制服代等 | ✗ 賃金改善にも不算入 |
出典:厚生労働省「介護職員等処遇改善加算に関するQ&A(第1版)」問1-3・問1-4・問1-5(令和8年3月13日)
この記事でわかること
- 月額賃金改善要件Ⅰ・Ⅱの定義と加算区分別の必要要件
- 月額賃金改善要件の計算方法(3ステップ・3サービス種別の計算例)
- 基本給・手当・賞与の使い分けと対象可否の完全一覧
- 基本給の減額・組み替えのNG事例と判断基準
- 最低賃金との関係(Q&A第1版 問1-6の正確な解説)
- 給与規程・計画書への反映方法
- 運営指導で確認される書類一覧
- 社労士がよく受ける現場の相談
▶ 処遇改善加算の制度全体については「処遇改善加算とは」をご覧ください。
月額賃金改善要件とは|3つの要件の中での位置づけ
月額賃金改善要件とは、処遇改善加算の算定要件の1つです。まず、3つの要件の中での位置づけを確認します。
| 3つの要件 | 内容のひとこと説明 |
|---|---|
| 月額賃金改善要件 | 受け取った加算額の一定割合以上を毎月の賃金(基本給・毎月払われる手当)で改善する |
| キャリアパス要件 | 職位・賃金体系・研修計画等の人材育成の仕組みを整備する |
| 職場環境等要件 | 働きやすい職場づくりの取組を実施・記録する |
月額賃金改善要件Ⅰとは
月額賃金改善要件Ⅰとは、加算Ⅳ相当の見込み加算額の2分の1以上を、基本給または決まって毎月支払われる手当として支給することを求める要件です。
「加算Ⅳ相当の加算額の2分の1以上を、月給(基本給または決まって毎月支払われる手当)の改善に充てる」
(出典:厚生労働省 老発0313第6号、令和8年3月13日)
全ての加算区分(Ⅰ〜Ⅳ)で満たすことが求められます。

月額賃金改善要件Ⅱとは
月額賃金改善要件Ⅱとは、前年度(令和7年度)と比較して、ベースアップ等加算相当の加算額の3分の2以上の新たな基本給等の月額改善(月給の引き上げ)を行うことを求める要件です。加算Ⅰ・Ⅱを算定する場合に追加で必要となります。
加算区分別の必要要件一覧
| 加算区分 | 月額賃金改善要件Ⅰ | 月額賃金改善要件Ⅱ | その他 |
|---|---|---|---|
| 加算Ⅰイ・Ⅰロ | ✅ 必要 | ✅ 必要 | 職場環境等要件13項目以上・キャリアパス要件Ⅰ〜Ⅴ・見える化 |
| 加算Ⅱイ・Ⅱロ | ✅ 必要 | ✅ 必要 | 職場環境等要件13項目以上・キャリアパス要件Ⅰ〜Ⅳ・見える化 |
| 加算Ⅲ | ✅ 必要 | 不要 | 職場環境等要件7項目以上・キャリアパス要件Ⅰ〜Ⅲ |
| 加算Ⅳ | ✅ 必要 | 不要 | 職場環境等要件7項目以上・キャリアパス要件Ⅰ〜Ⅱ |
出典:厚生労働省「介護職員等処遇改善加算等に関する基本的考え方並びに事務処理手順及び様式例の提示について(令和8年度分)」(老発0313第6号、令和8年3月13日)
💡 介護パートナー編集部の実務ポイント
「月額賃金改善要件」が全加算区分で必要なのは、処遇改善加算の制度趣旨が「一時的な手当ではなく、継続的な賃金水準の底上げ」にあるためです。賞与・一時金はあくまでも補完的な手段であり、毎月の賃金改善が基本です。この点を誤解して「賞与でまとめて払えばいい」と考えると、実績報告で月額賃金改善要件の不充足として指摘される可能性があります。
▶ キャリアパス要件の詳細はこちら
▶ 職場環境等要件の詳細はこちら
月額賃金改善要件の計算方法|3ステップと具体例

ステップ①:加算Ⅳ相当の見込み加算額を計算する
まず、自事業所の加算Ⅳ相当の見込み月額加算額を計算します。
加算Ⅳ相当月額加算額 = 前年度の月平均介護報酬総単位数(処遇改善加算除く) × 加算Ⅳの加算率 × 地域単価
▶ 加算額の詳しい計算方法は「処遇改善加算の計算方法」をご覧ください。
ステップ②:必要な月額改善額を計算する(1/2の計算)
必要な月額改善額 = 加算Ⅳ相当月額加算額 × 1/2(以上)
この金額以上を、基本給または毎月払われる手当として支給する必要があります。
ステップ③:実際の月額改善額と照合する
実際に毎月支給している賃金改善額(基本給の引き上げ額+毎月払われる手当の引き上げ額)が、ステップ②で計算した金額以上になっているかを確認します。
サービス別 計算例
| サービス種別 | 加算Ⅳ相当月額加算額(例) | 必要な月額改善額(1/2以上) | 計算の考え方 |
|---|---|---|---|
| 訪問介護(加算Ⅲを算定) | 例:月200,000円 | 100,000円以上/月 | 200,000円 × 1/2 = 100,000円。これを基本給引き上げや毎月手当で支給する |
| 通所介護(加算Ⅲを算定) | 例:月300,000円 | 150,000円以上/月 | 300,000円 × 1/2 = 150,000円。対象職員全員に按分して月額改善する |
| 特別養護老人ホーム(加算Ⅱを算定) | 例:月1,000,000円 | 500,000円以上/月 | 1,000,000円 × 1/2 = 500,000円を月額で改善し、残りは賞与等でも可 |
💡 介護パートナー編集部の実務ポイント
上記の計算例はあくまでイメージです。実際の加算額は事業所の総単位数・サービス種別・加算区分・地域単価によって大きく異なります。計画書を作成する際は、指定権者の案内を確認し、実際の見込み加算額を使って計算してください。「加算Ⅳ相当額」は、自事業所が加算Ⅰ〜Ⅲを算定していても、月額賃金改善要件Ⅰの計算には加算Ⅳ相当の加算率を使う点に注意が必要です。
基本給・毎月の手当・賞与は使えるか?完全整理

「月額賃金改善」に含まれるもの・含まれないもの
| 賃金の種類 | 月額賃金改善要件への算入 | 根拠・備考 |
|---|---|---|
| 基本給(月給制) | ◎ 算入可 | 最も基本的な改善方法 |
| 基本給(時給制)の時給引き上げ | ◎ 算入可 | Q&A第1版 問1-4:基本給の引き上げとして取り扱って差し支えない |
| 基本給(日給制)の日給引き上げ | ◎ 算入可 | 同上 |
| 決まって毎月支払われる手当(職能手当・資格手当・役職手当・地域手当等) | ◎ 算入可 | Q&A第1版 問1-3:名称を問わず対象。月ごとに額が変動する手当も含む |
| 時給や日給への上乗せの形で支給される手当 | ◎ 算入可 | Q&A第1版 問1-4:「決まって毎月支払われる手当」と同等のものとして取り扱って差し支えない |
| 通勤手当・扶養手当等(労働と直接的な関係が薄い手当) | △ 賃金改善には含められるが月額改善要件には算入不可 | Q&A第1版 問1-3:「決まって毎月支払われる手当」には含まれない |
| 月ごとに支払われるか否かが変動する手当 | △ 同上 | Q&A第1版 問1-3 |
| 賞与・一時金 | ✗ 月額改善要件には算入不可 | 月額賃金改善要件は毎月の賃金での改善が必要 |
| 研修費・制服代・採用費等 | ✗ 賃金改善額にも含められない | Q&A第1版 問1-5:「賃金改善」とは賃金の改善をいうものであるため含めてはならない |
出典:厚生労働省「介護職員等処遇改善加算に関するQ&A(第1版)」(令和8年3月13日)
「処遇改善手当」という名前の手当は使えるか
結論として、「処遇改善手当」という名称の手当でも月額賃金改善要件に算入できます。
Q&A第1版 問1-3では、「手当の名称は、「処遇改善手当」等に限る必要はなく、職能手当、資格手当、役職手当、地域手当等の名称であっても差し支えない」と明示されています。逆に言えば、「処遇改善手当」という名称も問題ありません。
ただし、名称を問わず「決まって毎月支払われる手当」であることが条件です。月によって支払う・支払わないが変動する場合は月額改善要件に算入できません。
賞与・一時金だけで月額改善要件を満たそうとするとどうなるか
月額賃金改善要件Ⅰは、加算Ⅳ相当の1/2以上を毎月の賃金で改善することを求めています。賞与・一時金は「毎月支払われる賃金」ではないため、月額賃金改善要件の充足には使えません。
例えば、加算Ⅳ相当月額加算額が20万円の場合、毎月の賃金で10万円以上改善した上で、残りを賞与や一時金に充てることは可能です。しかし、毎月の改善が10万円に満たない場合は月額賃金改善要件Ⅰを満たせていないことになります。
基本給を下げてもいいか?減額・組み替えのNG事例
ベースダウン(基本給の一律引き下げ)は制度趣旨に反する
処遇改善加算を算定している事業所において、処遇改善加算を原資とする賃金改善以外の部分で賃金水準を引き下げることは、制度趣旨に反するものとして整理されています。
通知(老発0313第6号、令和8年3月13日)では、処遇改善加算を原資とする賃金改善以外の部分で賃金水準を引き下げないことが求められています。また、Q&A第1版 問1-2では「賃金水準のベースダウン(賃金表の改訂による基本給等の一律の引下げ)等を行ったわけではないにも関わらず〜」という文脈でベースダウンが言及されており、意図的なベースダウンは通知の趣旨に反するものとして区別されています。
「基本給を下げて手当を新設する」付け替えはどう判断するか
月額賃金改善要件を満たすために、既存の賞与や一時金の一部を減額して基本給等に付け替えることは、通知上「差し支えない」とされています。
ただし、Q&A第1版 問3では次の点が明示されています。
「介護サービス事業所等は、月額賃金改善要件を満たすような配分を行った結果、事業所全体での賃金水準が低下しないようにするだけでなく、各職員の賃金水準が低下しないよう努めること」
(出典:厚生労働省「介護職員等処遇改善加算に関するQ&A(第1版)」問3)
つまり、付け替えによって特定の職員の手取り額が実質的に減少しないよう配慮することが求められています。
やってはいけないNG事例3選

| NGパターン | 問題点 | 正しい対応 |
|---|---|---|
| 基本給を一律に引き下げ、その分を「処遇改善手当」に付け替えて月額改善要件を満たしたと主張する | 賃金水準が実質的に下がっておらず、処遇改善として認められない。また、ベースダウンは原則禁止 | 基本給を下げずに、新たに手当を追加または引き上げる |
| 既存の賞与を大幅に削減して、その分を毎月の「処遇改善手当」に回す | 一部の職員の年収が実質的に減少する可能性がある。各職員の賃金水準が低下しないよう努めることが求められる | 賞与の削減と手当の新設が職員全体・各職員の年収に与える影響を確認した上で実施する |
| 月額賃金改善要件を満たすため、通勤手当や扶養手当を「決まって毎月支払われる手当」として計上する | 通勤手当・扶養手当等は「決まって毎月支払われる手当」には該当しない(Q&A第1版 問1-3) | 職能手当・資格手当・役職手当等の労働と直接的な関係がある手当を使う |
💡 介護パートナー編集部の実務ポイント
「基本給を下げて処遇改善手当を新設する」という組み替えは、一見うまくいきそうですが、就業規則・賃金規程の変更が必要であり、場合によっては労働条件の不利益変更として労使の合意が必要になります。また、変更後の内容が計画書・実績報告書と一致しているかを必ず確認してください。変更前に社労士に相談することをお勧めします。
処遇改善加算と最低賃金の関係
「処遇改善加算を支給したら最低賃金を満たしているか」という点について、厚労省Q&Aに明確な回答があります。原文を確認した上で正確に解説します。
Q&A第1版 問1-6の正確な内容
Q&A第1版 問1-6では次のように示されています。
「処遇改善加算の加算額が、臨時に支払われる賃金や賞与等として支払われておらず、予定し得る通常の賃金として、毎月労働者に支払われているような場合には、当該加算額を最低賃金額と比較する賃金に含めることとなるが、処遇改善加算の目的等を踏まえ、最低賃金を満たした上で、賃金の引上げを行っていただくことが望ましい。」
(出典:厚生労働省「介護職員等処遇改善加算に関するQ&A(第1版)」問1-6、令和8年3月13日)
この回答のポイントは次のとおりです。
| 状況 | 最低賃金の計算への算入 |
|---|---|
| 処遇改善加算の加算額が毎月の通常の賃金として支払われている場合(基本給・毎月払われる手当として組み込まれている場合) | 最低賃金額と比較する賃金に含めることとなる |
| 処遇改善加算の加算額が賞与・一時金として支払われている場合 | 最低賃金額と比較する賃金には含まれない |
⚠️ Q&Aの「望ましい」という表現に注意
Q&Aでは「最低賃金を満たした上で、賃金の引上げを行っていただくことが望ましい」と述べています。「処遇改善加算を基本給に含めて最低賃金をギリギリ満たせばいい」という考え方ではなく、最低賃金は処遇改善加算なしで満たした上で、さらに引き上げを行うことが制度の趣旨に沿った使い方です。
時給換算での確認方法と計算例
最低賃金は時給換算で比較します。処遇改善加算を毎月の賃金に組み込んでいる場合は、以下の手順で確認します。
【計算例:時給制パートの場合】
- 時給:950円(最低賃金:1,000円を下回っている)
- 処遇改善加算で時給を50円引き上げ → 時給:1,000円
- この場合、処遇改善加算による時給引き上げは「基本給の引き上げ」として取り扱って差し支えなく(Q&A 問1-4)、最低賃金の比較賃金に含まれる
- ただし、処遇改善加算の目的(賃金の底上げ)を踏まえると、最低賃金は処遇改善加算なしで満たしていることが望ましい
💡 介護パートナー編集部の実務ポイント
最低賃金との関係は、地域・職員の雇用形態・賃金体系によって個別の判断が必要です。特に「処遇改善手当」として別途支給している場合は、その手当が最低賃金の計算に含まれるかどうかは支給方法によって異なります。具体的な判断に迷う場合は、都道府県労働局または社会保険労務士に確認することをお勧めします。
給与規程・計画書への反映方法
給与規程に何を追記すべきか
月額賃金改善要件を満たすための賃金改善内容(基本給の引き上げ・新たな手当の設置等)は、就業規則または賃金規程に明記する必要があります。
規程に追記すべき内容の例:
- 処遇改善手当を新設する場合:手当の名称・支給対象者・支給額の計算方法・支給時期
- 基本給を引き上げる場合:引き上げの根拠・時期・対象者の範囲
- 既存手当を引き上げる場合:変更後の金額・適用時期
就業規則の変更は、常時10人以上を雇用する事業場では労働基準監督署への届出が必要です。また、不利益変更に当たる場合は労使の合意が必要なため、事前に内容を確認してください。
計画書の「賃金改善の方法」欄への記載例
処遇改善計画書の賃金改善の方法欄には、以下の内容を記載します。
| 記載項目 | 記載例 |
|---|---|
| 賃金改善の方法 | 「処遇改善手当(毎月支給)および基本給の引き上げにより賃金改善を実施する」 |
| 月額賃金改善要件の充足方法 | 「加算Ⅳ相当額の1/2以上を、毎月の処遇改善手当として支給する。残りは賞与または一時金にて配分する」 |
| 対象者の範囲 | 「介護職員(正規・非常勤を含む)および介護従事者(看護師・ケアマネ・事務職等を含む)」 |
記載内容と実際の支給が一致していないと起きること
計画書に「毎月処遇改善手当を支給する」と記載しているにもかかわらず、実際には賞与でまとめて支給していた場合は、計画書との乖離として運営指導で指摘される可能性があります。計画書の内容は必ず実態と一致させてください。変更が生じた場合は変更届を提出してください。
運営指導では何を確認されるか

運営指導での確認の流れ
月額賃金改善要件に関して、運営指導では通常以下の順番で確認されます。
| ステップ | 確認書類 | 確認内容 |
|---|---|---|
| ① | 処遇改善計画書 | 月額賃金改善要件の充足方法が記載されているか・計算根拠 |
| ② | 就業規則・賃金規程 | 計画書に記載した手当や基本給の改善が規程に反映されているか |
| ③ | 賃金台帳 | 毎月の実際の支給額が計画書と一致しているか |
| ④ | 給与明細 | 手当等が毎月実際に支給されているか・金額の整合 |
| ⑤ | 実績報告書 | ①〜④の実績が正確に記載されているか |
この流れの中で「計画書の記載→規程の整備→実際の支給→実績報告」の各段階が一致していないと指摘対象となります。
確認される書類一覧
| 確認される書類 | 確認されるポイント |
|---|---|
| 処遇改善計画書 | 月額賃金改善要件の充足方法が明記されているか・計算の根拠 |
| 就業規則・賃金規程 | 処遇改善手当・基本給等の賃金改善内容が規程に反映されているか |
| 賃金台帳 | 毎月の実際の支給額・改善額が計画書と一致しているか |
| 給与明細 | 処遇改善手当等が毎月支給されているか・金額 |
| 実績報告書 | 月額賃金改善要件の実績が正確に記載されているか |
| 周知記録(署名台帳等) | 全職員への周知が実施されているか |
よくある指摘パターン
| 指摘パターン | 原因 | 防止策 |
|---|---|---|
| 計画書の賃金改善方法と実際の支給方法が違う | 「毎月支給」と計画したが賞与で支給していた | 計画書の内容を必ず実態に合わせる。変更があれば変更届を提出 |
| 給与規程に手当の根拠がない | 手当を支給しているが規程への記載を失念していた | 新たな手当を設置する場合は必ず規程に追記する |
| 月額改善要件の計算が合わない | 算定に含められない手当(通勤手当等)を計上していた | 「決まって毎月支払われる手当」の定義を確認し、適切な手当のみを計上する |
| 全職員への周知記録がない | 口頭で説明しただけ | 書面による周知と署名取得を実施し、記録を保存する |
▶ 返還等への対応については「処遇改善加算の返還リスクと防止策」をご覧ください。
社労士がよく受ける現場の相談
実際の介護事業所の管理者から寄せられることが多い相談を、Q&Aの根拠とともに解説します。
相談①「基本給を下げて処遇改善手当に回してもいいですか?」
答え:「差し支えない」とされていますが、各職員の賃金水準が低下しないよう努めることが求められます(Q&A第1版 問3)。基本給を下げると就業規則の変更(場合によっては不利益変更として労使合意が必要)が必要になるため、実施前に影響を確認することをお勧めします。
相談②「賞与でまとめて払えばいいですか?」
答え:月額賃金改善要件Ⅰは「毎月の賃金での改善」が必要なため、賞与・一時金のみで月額改善要件を満たすことはできません。加算Ⅳ相当額の1/2以上は毎月の賃金で改善し、残りを賞与・一時金に充てることは可能です。
相談③「最低賃金を超えていれば問題ないですか?」
答え:最低賃金を満たすことは最低限の条件ですが、処遇改善加算の目的は「賃金水準の底上げ」です。厚労省Q&Aでも「最低賃金を満たした上で、賃金の引上げを行っていただくことが望ましい」と述べています(Q&A第1版 問1-6)。処遇改善加算で最低賃金をギリギリ満たすという使い方は制度趣旨に反する可能性があります。
相談④「時給制のパートも月額賃金改善要件の対象ですか?」
答え:はい、対象です。時給制の職員については、時給を引き上げることが「基本給の引き上げ」として取り扱われます(Q&A第1版 問1-4)。また、時給や日給への上乗せの形で支給される手当は「決まって毎月支払われる手当」と同等のものとして取り扱って差し支えないとされています。
相談⑤「通勤手当を上げて月額改善要件を満たそうとしています」
答え:通勤手当は「労働と直接的な関係が薄く、当該労働者の個人的事情により支給される手当」に該当するため、「決まって毎月支払われる手当」には含まれません(Q&A第1版 問1-3)。月額賃金改善要件への算入はできません。職能手当・資格手当・役職手当など労働と直接的な関係がある手当を使ってください。
よくある失敗ケーススタディ
ケース①:賞与だけで月額改善要件を満たそうとして実績報告で指摘された
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| 状況 | 月額賃金改善要件を「賞与で支給すれば満たせる」と誤解し、計画書にも「賞与として支給する」と記載した |
| 問題 | 賞与・一時金は「毎月の賃金」ではないため、月額賃金改善要件Ⅰの1/2以上の充足にはならない |
| 指摘 | 実績報告書を確認したところ、月額賃金改善要件Ⅰを満たしていないとして指定権者から改善指導を受けた |
| 教訓 | 計画書作成前に月額賃金改善要件の計算を行い、毎月支給する賃金(基本給・手当)での改善額が要件を満たしているか確認する |
ケース②:「処遇改善手当」を支給したが給与規程に反映しておらず指摘された
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| 状況 | 月額賃金改善要件を満たすため「処遇改善手当」を新設したが、就業規則・賃金規程への追記を失念していた |
| 問題 | 計画書には「処遇改善手当を毎月支給」と記載していたが、規程に根拠がなかったため運営指導で指摘された |
| 指摘 | 「給与規程に記載のない手当を支給している。規程を整備し、改善報告を提出するよう」と指導された |
| 教訓 | 新たな手当を設置する場合は、給与規程(または就業規則)への追記・所轄労働基準監督署への届出を必ず実施する。計画書提出前に規程の整備を完了させる |
ケース③:時給制職員の時給引き上げが月額改善要件に含まれると知らずに改善不足になった
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| 状況 | 月額賃金改善要件の計算を月給制職員だけで行っており、時給制パートへの時給引き上げ分を計上していなかった |
| 問題 | 時給制職員の時給引き上げは「基本給の引き上げ」として取り扱えるため(Q&A 問1-4)、計上できていれば月額改善要件を充足していた。計算から除外したため要件不足になった |
| 影響 | 月額賃金改善要件Ⅰが不足していることが実績報告書の確認で判明した |
| 教訓 | 時給制・日給制の職員の時給・日給引き上げも月額賃金改善要件の計算に含めることができる。計画書作成時に全雇用形態の職員を含めて計算する |
ケース④:パート職員だけ時給引き上げを忘れていた
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| 状況 | 正規職員の基本給を引き上げて月額改善要件を満たしたと計算していたが、パート職員への時給引き上げが計画書に含まれていなかった |
| 問題 | パート職員への賃金改善が実施されておらず、計画書の「配分対象:全職員」という記載と実態が乖離していた |
| 指摘 | 運営指導で賃金台帳を確認したところ、パート職員の時給が据え置きのままであることが発覚。周知記録もなかった |
| 教訓 | 計画書に「全職員対象」と記載した場合は、正規・非常勤・パートを問わず全員への改善を実施し、賃金台帳で確認できる状態にする |
ケース⑤:年度途中入職の新入職員を対象外にしてしまった
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| 状況 | 年度途中で採用した職員に対して、「今年度は途中入職だから処遇改善手当の対象外」と誤って判断し、手当を支給しなかった |
| 問題 | 入職後に実施した賃金改善は対象に含めることができる。一律に除外することは誤った取り扱い |
| 指摘 | 実績報告書の確認で対象職員の漏れが判明した |
| 教訓 | 年度途中の採用者は入職月から対象に含める。計画書に採用者の取り扱いを明記しておくと管理しやすい |
提出前チェックリスト・FAQ・社労士相談
提出前チェックリスト
| 確認項目 | チェック |
|---|---|
| 加算Ⅳ相当の月額見込み加算額を計算した | □ |
| 必要な月額改善額(加算Ⅳ相当×1/2)を計算した | □ |
| 毎月支給する賃金(基本給・毎月払われる手当)での改善額が必要額以上になっているか確認した | □ |
| 月額改善に使う手当が「決まって毎月支払われる手当」の定義を満たしているか確認した(通勤手当・扶養手当を使っていないか) | □ |
| 計画書の「賃金改善の方法」欄に月額賃金改善要件の充足方法を記載した | □ |
| 手当の新設・変更がある場合、給与規程(就業規則)に反映・届出を行った | □ |
| 加算Ⅰ・Ⅱを算定する場合、月額賃金改善要件Ⅱ(前年度比の月額改善)も確認した | □ |
| 全職員への周知を実施し、署名記録を保存した | □ |
| 時給制・日給制職員の時給・日給引き上げ分を計算に含めているか確認した | □ |
| 計画書の内容と実際の支給方法が一致しているか確認した | □ |
よくある質問(FAQ)
Q1. 月額賃金改善要件とはどういう意味ですか?
加算Ⅳ相当の見込み加算額の2分の1以上を、基本給または決まって毎月支払われる手当として支給することを求める要件です。全ての加算区分(Ⅰ〜Ⅳ)で必要です。
Q2. 月額賃金改善要件Ⅱは全員に必要ですか?
加算Ⅰ・Ⅱを算定する場合に追加で必要です。加算Ⅲ・Ⅳのみを算定する事業所は月額賃金改善要件Ⅰのみが必要です。
Q3. 「決まって毎月支払われる手当」とは何ですか?
労働と直接的な関係が認められ、労働者の個人的事情とは関係なく支給される手当を指します。職能手当・資格手当・役職手当・地域手当等が例として挙げられます。通勤手当・扶養手当は含まれません(Q&A第1版 問1-3)。
Q4. パートの時給を上げるのは月額賃金改善要件に使えますか?
はい、使えます。時給制の職員の時給引き上げは「基本給の引き上げ」として取り扱って差し支えないとされています(Q&A第1版 問1-4)。
Q5. 賞与だけで月額賃金改善要件を満たすことはできますか?
できません。月額賃金改善要件は毎月の賃金(基本給または毎月払われる手当)での改善が必要です。賞与・一時金で満たすことはできません。
Q6. 通勤手当を上げて月額賃金改善要件に算入できますか?
できません。通勤手当は「決まって毎月支払われる手当」に含まれないため、月額賃金改善要件への算入はできません(Q&A第1版 問1-3)。
Q7. 処遇改善加算は最低賃金の計算に含めてよいですか?
処遇改善加算の加算額が毎月の通常の賃金として支払われている場合には、最低賃金額と比較する賃金に含めることとなります。ただし、厚労省は「最低賃金を満たした上で、賃金の引上げを行っていただくことが望ましい」としています(Q&A第1版 問1-6)。
Q8. 給与規程の修正は必ず必要ですか?
手当の新設・変更を行う場合は、就業規則または賃金規程への記載が必要です。常時10人以上の事業場では所轄労働基準監督署への届出も必要です。
Q9. 月額賃金改善要件を満たせなかった場合はどうなりますか?
月額賃金改善要件は算定要件の一つです。満たせなかった場合は算定要件を満たさないものとして、加算の返還等の対象となる可能性があります。実績報告書の提出前に不足を発見した場合は、指定権者に相談してください。
Q10. 月額賃金改善要件の充足を計画書にどう書けばいいですか?
計画書の「賃金改善の方法」欄に、「加算Ⅳ相当額の1/2以上を○○手当(毎月支給)として支給する」等、具体的な賃金改善の方法と月額改善要件の充足方法を記載します。
社労士への相談をおすすめするケース
| こんな状況の場合 | なぜ専門家が必要か |
|---|---|
| 月額賃金改善要件の計算方法がわからない・自信がない | 計算ミスが返還リスクに直結する |
| 給与規程の修正方法がわからない | 不利益変更に当たる場合は労使合意が必要 |
| 基本給の組み替えを検討している | 各職員の賃金水準への影響確認が必要 |
| 時給制・日給制・複数雇用形態が混在している | 雇用形態ごとの計算方法の確認が必要 |
| 運営指導で月額賃金改善要件について指摘を受けたことがある | 再発防止のための規程整備・体制構築が必要 |
月額賃金改善要件の計算・規程整備でお困りの方へ
月額賃金改善要件は、計算ミスが実績報告での返還リスクに直結します。「計算が合っているか自信がない」「給与規程の修正方法がわからない」という場合は、計画書提出前にご相談ください。介護パートナーでは、処遇改善加算の実務に精通した社会保険労務士をご紹介しています。
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この記事の結論
3行でまとめると
月額賃金改善要件は、加算Ⅳ相当額の1/2以上を毎月の賃金(基本給または毎月払われる手当)で改善することを求める要件です。
基本給・時給・毎月払われる手当は算入可能ですが、賞与・一時金・通勤手当等は月額改善要件への算入はできません。
給与規程への反映と計画書の記載内容を実態と一致させることが、運営指導での指摘を防ぐ最大の対策です。
- ✅ 加算Ⅳ相当額の1/2以上を毎月の賃金(基本給・毎月払われる手当)で改善する
- ✅ 基本給に組み込んでもOK。毎月払われる手当でもOK(「処遇改善手当」という名称も可)
- ✅ 時給・日給の引き上げも基本給の引き上げとして取り扱ってよい
- ⚠️ 賞与・一時金だけでは月額賃金改善要件Ⅰを満たせない(加算Ⅳ相当の1/2以上は毎月の賃金で改善することが必要)
- ⚠️ 通勤手当・扶養手当は月額改善要件への算入不可
- ⚠️ 基本給を下げて手当に付け替える場合、各職員の賃金水準が低下しないよう努めること
- ⚠️ 最低賃金との関係は支給方法によって扱いが異なる。処遇改善加算なしで最低賃金を満たすことが望ましい
- 💬 計算・規程整備に不安がある場合は、計画書提出前に社労士に相談する
更新履歴
2026年7月 初版公開
※制度改正・Q&A改訂のたびに随時更新します
参考・引用資料:
- 厚生労働省「介護職員等処遇改善加算等に関する基本的考え方並びに事務処理手順及び様式例の提示について(令和8年度分)」(老発0313第6号、令和8年3月13日)
- 厚生労働省「介護職員等処遇改善加算に関するQ&A(第1版)」(令和8年3月13日)
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